2017年7月22日土曜日

パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち

渋谷東急Bunkamura ル・シネマ1で、マレーネ・イヨネスコ監督作品『パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち』を観ました。英国王立ロイヤルバレエ団露マリインスキー・バレエと並ぶ世界三大バレエ団のひとつ、パリ・オペラ座は、300年以上の伝統を持つ世界最古のバレエ団。"Backstage"の原題の通り、86分の上映時間のほとんどがガルニエ宮のドーム屋根の下のリハーサル室の光景です。

エトワールとは星の意。英国ではプリンシパル、イタリア語ではプリマ・ドンナとなりますが、センターを務めるトップダンサーたちがいかにして表現を極めていくのか、その過程を追ったドキュメンタリーフィルムです。

出演者は、ダンサー、コーチ、振付師、指揮者、演奏家、劇場スタッフ。公演とその準備に直接携わる人たちだけ。家族も友人も誰一人として画面には登場しない。

高い跳躍から着地するときに硬いトウシューズの底が木製のフロアに当たる音。ひとつのシークエンスを踊り終えた後のダンサーの荒い息づかい。コーチのアドヴァイスの大声。劇場スタッフたちの作業音。サウンドトラックはほぼリハーサル室のピアノの生演奏だけで、劇映画的なスコアは使用されていません。

ナレーションは一切なく、テロップも曲名と作曲家、振付師、ダンサーの名前のみ。何の説明もなく始まり、唐突に終わる。オペラとは異なり、バレエというのは言葉を発さない、言葉を用いないで情感を伝えることに傾注した表現形式であることとリンクしているように思えます。ところどころで挿入されるダンサーたちのインタビューの言葉と、何よりもその身体がすべてを語っている。

群舞のリハーサルに呼ばれたバレエ学校の子どもたちがエトワールを見つめる憧れのまなざしと「バレエはコード化された踊りですが、解放を加えることで現代性を表現するのがキーです」と言うマチュー・ガニオの言葉が印象的でした。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿