2016年2月21日日曜日

都電ライブ〜黄色い電車にゆられて〜

春の嵐が通り過ぎて日曜日の朝にはすっかり良い天気。最近ライブハウスでよくご一緒するまりさんの企画 『都電ライブ〜黄色い電車にゆられて〜』へ。

都電荒川線は東京に唯一残っている路面電車です。僕が子供の頃にはまだ複数の路線が走っていて、亀戸のいとこの家に行くときなどによく乗りましたが、いまでは地下鉄や都バスに変わってしまいました。

早稲田で14時に乗車して終点の三ノ輪橋まで。約1時間の道中、窓から入る日差しで背中がぽかぽか温かい。明るい午後の街をがたごと走る可愛らしい車両で、mueさんあべたかしGOLD&キラキラみさこさん、2組の歌と演奏を楽しむ小さな旅。

音響機材の整ったホールやライブハウス、一箇所に留まって演奏するストリートライブとは違う。モーターやブレーキ音、線路の響きで車内は賑やか。生音で奏でられる演奏も歌詞も、座席や演奏場所によっては、聞こえかたもところどころ途切れがちですが、そこはみんなで協力して、集合的無意識を結集して補い合って。この楽しさは、ミュージシャンも観客も同じ揺れ、同じ慣性の法則に従って移動しているという運命共同体的な一体感から来るものでしょう。

レトロな復刻塗装が施された7022号車の写真を撮る人もたくさん。停留所で都電を待つ人や信号待ちの歩行者たち、反対方向にすれ違う都電の乗客や併走する乗用車の運転手。不思議そうな表情や笑顔で人々が覗き込む数秒から数十秒の時間。「こんな電車が走ってたよ!」と、うちに帰って話すのかな。

駄菓子や入浴剤などお土産どっさり、あべたかしGOLDさんが表紙を描いたパンフレットにまりさんが書いた出演者の紹介文も素敵でした。

 

2016年2月11日木曜日

となりの駅の猫のこと

建国記念の休日。5年連続で同じ作家の個展にお邪魔しています。狙ったわけではないのですが、たまたまその同じ日に。

イラストレーターであり、ミステリーを中心とした多くの書籍の装幀も手がける佐久間真人さんの個展『となりの駅の猫のこと』。昨年までは銀座7丁目のシャトン・ド・ミューで開催されていましたが、オーナーの引退に伴う閉廊により、2丁目のギャラリー銀座へ。

裏通りのビルの4階から、マロニエ通りに面した1階に移り、よく晴れた祝日の午後、通りすがりにちょっと覗いていこうかな、というお買いもの帰りとおぼしき方も。

佐久間さんご本人も在廊で、ひっきりなしに訪れるお客様にひとりひとり丁寧に対応されていました。

目に慣れた独特のすんだ色調の作品群のなかで、ひときわ目を引いたのが「コマドリ」と題された絵。ハリントン・へクストの『誰がダイアナ殺したの?』の新訳(論創海外ミステリ)の表紙画です。コマドリが流した血の色の赤が目に焼きつきました。

「マザーグースですか?」と尋ねると「そうなんですけど、この小説が『パタリロ!』クックロビン音頭の元ネタなんですよ」と教えてくださいました。

今週末2月14日までの展示です。銀座のデパ地下でチョコレートをお求めの皆様、昭和通りを渡っていらしてみてはいかがでしょうか。

2016年2月7日日曜日

バイリンガル詩集TOY BOX完成記念朗読会

古民家というより商家もしくは町工場。神田川を渡る石切橋に程近い、広い三和土のある木造家屋をリノベーションしたsuido cafeで、芦田みのりさんが主催し、僕も2010年から参加しているバイリンガル詩集の5年ぶりの第2集『TOY BOX 2015』の完成を記念して、小さな朗読会が開催されました。

日本語の詩を英語に、英語圏の同時代の詩人の作品を日本語に翻訳し、作者と訳者が朗読する。かとうゆかさん(日本語)とマエキクリコさん(英語)が2ヶ国語でMCします。

ひとつの作品を複数言語、複数の声によって表現することで、別の響きと景色が与えられます。作品数を詰め込まずゆったりとした進行ながら、刺激のある時間を過ごしました。

自作の「すべて」は、僕の日本語と訳者マシュー・ホロメキー氏(カナダ人)の英語で、アメリカの詩人Jan Lewisさんの"From the Republic of Words"(邦訳:言葉の共和国より)とアイルランドの詩人Nora McGuillenさんの"Knife Sharpener"(邦題:ナイフ砥ぎ機)の日本語訳を朗読しました。小さい声でゆっくり読んで声にどれだけ質量を乗せられるか、というのを最近は追求しているのですが、生声でもようやく成果が出せるようになってきたように思います。

江戸川橋は20代中盤を過ごした懐かしい土地。終演後、次のお座敷まですこし時間があったので、当時暮らしていたアパートに寄ってみました。「コインランドリー」を書いた屋上の洗濯場はなくなっていましたが、築30年以上のいまもきれいに使われているようでした。