2013年5月31日金曜日

日曜音楽バー「銀座のノラの物語」

カワグチタケシのソロライブ。リスペクトするミュージシャン、ノラオンナさんが日曜店長をつとめる「銀座のノラの物語」。ご好評を頂戴しました2013年2月24日に続き2度目の登場です。奇しくも前週6/16はカワグチタケシの誕生日。つまり年甲斐もなくバースデーワンマン(笑)。

銀座の裏通りにあるカウンターバー「ときね」にて。生声の朗読とノラオンナさんの絶品手料理をお楽しみください!

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日曜音楽バー「銀座のノラの物語

出演:カワグチタケシ
日時:2013年6月23日(日)
   17時開場、17時半開演、19時~バータイム
会場:ときね 東京都中央区銀座6-2-6 ウエストビルB2
料金:5,000円
   ライブチャージ、おつまみ3品、スナック3品、
   〆の一品(味噌汁、おかゆ、麺など)
   ハイボール飲み放題(ソフトドリンクもあります)
   以上全部込みの料金です。
   ※飲み物持ち込み自由です。

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更に御来場の皆様にはもれなく限定盤ライブCD-Rをプレゼント。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPで毎月開催している「詩と映像と音楽の夜」"Poemusica"からベストパフォーマンスをチョイス!

*完全予約制、先着10名様限定の超プレミアム・ディナーショー!
 ご予約は nora_onna@hotmail.co.jp まで。お名前、人数、
 お電話番号をお知らせください。




2013年5月26日日曜日

中学生円山

NHK朝ドラ『あまちゃん』も好調な宮藤官九郎監督作品『中学生円山』をユナイテッドシネマ豊洲で観ました。

「考えない大人になるぐらいなら、死ぬまで中学生でいるべきだ」「妄想が現実を超えるとき、それが真実になる」。

江戸川区にある巨大団地の9号棟806号室に親子4人で暮らす中学2年の円山克也(平岡拓真)にとって、団地と学校とコンビニが世界のすべて。妄想だけが世界を拡げる術。上階に引っ越してきた謎のシングルファザー(草彅剛)をスナイパー「子連れ狼」と妄想していたが、やがて近郊の複数の団地で起こる連続殺人事件に巻き込まれていく。

食後のフルーツに拘泥する父親(中村トオル)、韓流ドラマ妄想が現実に浸食してくる母親(坂井真紀)、妹あかね(鍋本凪々美)と親友の祖父(遠藤賢司)の純愛、あかねの同級生ひかりの二股、三つ編みのヒロイン清水ゆず香(刈谷友衣子)への克也の思慕、と多角的な視点で群像劇を描きたいというコンセプトは伝わってきます。クドカン脚本らしい小ネタの応酬は楽しいが、映画全体としてはややまとまりを欠いた出来ではないでしょうか。

そのなかで、認知症の徘徊老人を演じた66歳の遠藤賢司の存在感が圧倒的です。野外ライブでアマチュアバンドからグレッチを奪い取りニール・ヤングばりのノイジーなギターとシャウトを聴かせたかと思えば、妹あかねの初恋の人となり河原で小さなラブソングを弾き語り、ラストの団地屋上では琵琶法師さながらにアクションシーンを盛り上げる。

僕自身リアルタイムでエンケンさんを聴いた世代ではなく、むしろ80年代に迷走(?)していた時代の『東京ワッショイ』『宇宙防衛軍』あたりに思い入れが強いのですが、単なるプロテストフォークではない「死ぬほど糞真面目にふざける」スタンスは健在です。



2013年5月23日木曜日

Poemusica ~すこしだけブルースが沁みる夜~

あと4週間で夏至。だいぶ日が長くなりました。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPにて"Poemusica ~すこしだけブルースが沁みる夜~"が開催されました。

栗田裕希さんは大阪から。先週から今週にかけて、名古屋と東京のライブサーキット中。ナチュラルのテレキャスターのブライトな音色を活かして、スモーキーな声でソウルフルに唄います。この日のサブタイトル通り、いやサブタイトル以上にブルースが心に沁みました。ブルース黎明期のアメリカ南部やグレイハウンドバス、ジュークジョイントの話。ゆったりとした大阪弁のMCも心地良く、会場を温めてくれました。旅の途中の人の話はいつも面白いです。

つづいてLittle Woody Animation。『オバケトゥザフューチャー』という作品で、はじめての即興生アテレコに挑戦。日本語の字幕に重ねる声は無国籍言語というか架空の言葉。そこに時折「ピニャコラーダ」「~のやつ」といった単語が挿入され、視覚的な意味と聴覚上の意味/無意味のはざまで客席の笑いを誘う。去年7月のPoemusicaのとき出演者みんなで競作した「メロディ・フェア」をひさしぶりに観られたのもうれしかった。

アカリノートさんは名曲「モチーフ」からスタート。彼が澄んだハイトーンで唄い出すと、すこしざわついていた会場の空気がはっきりと変わる。こういう瞬間があるからライブはたまりません。そしてLittle Woodyに呼応するように、アカリノート版「メロディ・フェア(カワグチタケシ訳詞)」。先週5/16が誕生日だったLittle Woody のためにサプライズ的なバースデーソングも飛び出して、照れるLittle Woody(笑)。

そして最後、いわさききょうこさん。リハーサルのカジュアルなボーダー姿から一転。白の上下で凛とした佇まいです。曲調は正統派のフォークソングといっていいと思いますが、熟語の多い硬質な歌詞と自然できれいな歌唱とあいまって清潔感のある強いオーラを放つ人。客席でメモを取るお客様が何人もいらっしゃって、その熱心さが窺われます。音楽に対する彼女の真摯で生真面目な姿勢がきっと伝わっているのでしょう。

僕もブルースを若干意識して、まずオープニングにカバーを2篇。トム・ウェイツの「ダウンタウン・トレイン」カワグチタケシ訳、栗田裕希さんにブルースの循環コードのバッキングをお願いしてラングストン・ヒューズの「ものういブルース」。アカリノートさんとふたりで「風の生まれる場所」再演、最後にアカペラで「アナザー・グリーン・ワールド」を朗読しました。

今回のサブタイトルをもらってから一ヶ月。ブルースを考える良い機会になりました。阪堺電軌沿線の錆びた風景もひとつのヒントになった。そして自分がどれだけ恵まれて育って、苦労知らずにここまで来たかってことも再認識しました。それでも、小さな苛立ちや忘れられない失敗はあるし、どんなに絶望的な環境においても、かすかな灯りや笑いがある。それがブルースってことなのかな、と思います。

さて、来月。これまた簡単そうで一筋縄にはいかないサブタイトルがついています(笑)。乞うご期待!

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Poemusica Vol.18 ~詩的にメロディアス~
日時:2013年6月20日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,300円 当日2,500円(ドリンク代別)
出演:アナン *Music
    瀬里奈 *Music
    倉沢桃子 *Music
    Little Woody *Animation
    カワグチタケシ *PoetryReading

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2013年5月19日日曜日

洗濯日和

東京の先週の週間天気予報によると今日の降水確率は60%。それが昨日には20%に修正され、朝にはすっかり晴れ上がって洗濯日和に。下北沢440で開催されたエリーニョ3rdアルバム『空中ランドリー』レコ発ワンマンライブ『洗濯日和』に行ってきました。

エリーニョさんとの出会いは昨年2月、下北沢Workshop Lounge SEED SHIPPoemusica Vol.2。それ以来なんとなく気にはなっていたのですが、ライブの日程が合わずに1年。ところが今年3月に出た新譜『空中ランドリー』があまりによくて、いてもたってもいられずに先月タワレコ新宿店インストアへ。恋ですね(笑)。

そして本日を迎えたわけですが。The eri-nyo Quintet の5人がステージに上がって1曲目のイントロを鳴らした瞬間に浮かぶ「?」。PAのバランスのせいか、アンサンブルが混沌として、リズムが上滑りしていく。このバンドの持つダイナミズムを耳がとらえきれない。

ところが4つ打ちの3曲目「プレリュード」のサビ、“重いまぶたでため息飲み込んで/向かう 繰り返す”という歌詞をエリーニョさんがシャウトした瞬間に、5人の向かう方向が気持ち良いくらいにビシっと揃い、すべての音が彼女の歌に収斂して、そこからは一気にアンコールの「ポケットライフ」まで。全13曲。僕も流れに乗れました。ライブって本当に生モノですね。面白い。

ロック、クラシック、ジャズ、プログレと、エリーニョさんは音楽的な引出しがとても多彩ですが、それをひとつにまとめてポップミュージックに仕立て上げているのが彼女の声であることは間違いありません。息の多いウィスパーボイスから、その声質のままフォルテシモまで上げる力を持っています。

田中さと子さん(左利き)のフルートは、主にリフやオブリガートを吹いていますが、そのソリッドな音色が実はこのクインテットのキモ。そして、ヨシカワタダシさんは真にインテリジェントなドラマー。「highway」のアウトロの7/8拍子や新曲「bits」の11/8(13/8?)拍子、奇数拍子を正確なアクセントで叩けるだけでなく、「チクタラタ」ではスナッピーを外したスネアで、あえてテンポを揺らすところなど、シビれました。

13時開演の会場の外は初夏の日曜の昼下がり。代沢三叉路の街路樹の新緑を5月の風が揺らして。昼間のライブというのも気持ち良いものですね。

 

2013年5月10日金曜日

人生見事にギャンブルだね、男はみんなシャボン玉

大阪は午後から雨でした。新しくなった大阪駅から線路をくぐる地下道を抜けて梅田シャングリラへ。金佑龍 (ex.cutman-booche)の1stソロアルバム『Live in Living』のレコ発ライブ「人生見事にギャンブルだね、男はみんなシャボン玉」に行ってきました。

すさまじいライブでした。「文学はダメ人間を輝かせる装置」とは、小説家藤谷治氏の弁ですが、音楽もまさにそうだなあ、と。いや、金佑龍には明らかに才能があります。ブルースやカントリーを基調にしながらあくまでもキャッチーなソングライティング、誠実で胸に迫る歌詞、緻密で正確なギタープレイ、ハスキーで耳に残る声、どこをとってもハイクオリティ。なのにどこか自信なさげな佇まいで、発言もどちらかといえば後ろ向き。理想とプライドが高いのに、頭がいいから、現実とのギャップが客観的に見えてしまうのでしょう。

そんな彼の凱旋を待ちわびていた満員の聴衆の期待感が会場の気温を瞬時に上昇させ、彼とバンドもそれに応えた。幸福で濃密な、魂のコール&レスポンス。会場に詰めかけた多くの人たちが自分のダメさはダメなりに受け入れていこうという気持ちになった夜でした。ステージで演奏する5人が本当に格好良かった。

新譜に収録されている「或る世界で」のサビの歌詞。「光を浴びている」と唄った次の行で「闇も浴びている」と言わずにはいられない、そのスタンスは心底信頼に値します。フィッシュマンズへの愛に溢れた「ナイトクルージング」のカバーも最高でした。

この日のバンドは「東横方面」。gnkosai脇山広介のツインドラム(!)、ウッドベースLittle Woody、ペダルスチール宮下広輔の4名編成。愛すべきダメ人間たちの饗宴(笑)。才能溢れる人たちが集まり、同じ方を向いて本気を出したときの手のつけられなさといったら! そのビッグビートは単なるサポートの枠を軽々と越えて、時にはゆるゆる、時にはガチで、放蕩息子の帰還を心から祝福し、支えていました。

金佑龍のMCの通り「今夜ここにいたことを後で自慢できる」、いやいますぐ誰彼かまわず自慢したい、そんなキラキラした空気が終演後、いつまでもごった返す会場ロビーに充満していました。


2013年5月5日日曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013 ③

五月の連休もいよいよ終盤に差し掛かってきました。東京は毎日お天気です。今日も有楽町東京国際フォーラムへ。ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013" 最終日はこの1本。

■公演番号:321 
ホールB7(ヴェルレーヌ) 10:45~11:30
ドビュッシー神聖な舞曲と世俗的な舞曲
ラヴェル序奏とアレグロ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「マ・メール・ロワ
イプ・ウィンシー指揮
香港シンフォニエッタ 篠崎和子(ハープ)

東京ではなかなか聴く機会のない日露独仏英米以外の国の楽団の演奏に触れることができるのもこのフェスの魅力のひとつだと思います(2007年に聴いたスペインのビルバオ交響楽団のチャイコフスキーはいまだに忘れ難い)。ある程度の規模の都市にはオーケストラがありますよね。もちろん香港にあっても不思議じゃない。平壌にだってあるくらいですから。

超国際都市のオケだけに人種国籍も多様ですが、肥満の団員がひとりもいない(笑)。男子が粒揃いでアジアの黒髪イケメン好きにはたまらないビジュアルです。団員の半数を超える女性演奏家もすらっとした長身の人が多くて格好良かった。

イプ・ウィンシー(葉詠詩)氏は今回聴いたなかでは唯一の女性指揮者。アメリカで学んでいるからか、昨日、一昨日のフランス人指揮者と異なり、シャープで明晰、構築的な音楽造形です。

フランス音楽に浸かった3日間でした。「ボレロ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「牧神の午後への前奏曲」を2回ずつ聴けたのも、それぞれの演奏家の個性の違いがわかって面白かったです。ドイツやイタリア、ロシアの音楽と違って、調性が不明瞭でとらえどころのないフランスの音楽ですが、実は一番熱心に聴いていたのは高校生のころなんですよね。ひさしくターンテーブルに乗せていないLP盤を引っぱり出してみようかなと思っています。

そして、来年のフェスのテーマは「アメリカ」だそうです。アンドリュー・ヨークギター曲なんか聴けたらうれしいな。

 

2013年5月4日土曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013 ②

"ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013"。2日目の今日は3公演を聴きました。

■公演番号:242 ホールC 11:45-12:30
デュリュフレグレゴリオ聖歌による4つのモテット op.10
フォーレレクイエム op.48(1893年版)
ミシェル・コルボ指揮 
ローザンヌ声楽アンサンブル 
シンフォニア・ヴァルソヴィア
シルヴィエ・ヴェルメイユ(ソプラノ)
ジャン=リュック・ウォーブル(バリトン)

コルボ指揮の合唱曲/宗教曲は、このフェスの名物みたいな感じで外せない演目であり、ハズレがありません。どちらも美しい演奏でした。『フランダースの犬』の最終回で、ネロが「パトラッシュ、もう疲れたよ」ってときに頭上のステンドグラスから差し込んでくる光。フォーレのレクイエムは複数の版が存在するんですね。今日聴いた1893年版は、中盤がとても愛らしく明るい音楽で、幼くして亡くなった子供を鎮魂するような響きがありました。

■公演番号:244 ホールC(プルースト) 16:00~16:45
ドビュッシー牧神の午後への前奏曲
フランク交響的変奏曲
ラヴェルボレロ
パスカル・ロフェ指揮 
フランス国立ロワール管弦楽団 
ベルトラン・シャマユ(ピアノ)

昨日フェイサル・カルイ指揮ラムルー管弦楽団と比べたら普通の「ボレロ」。小太鼓奏者にスポットを当て、指揮台の隣に置いたのはなかなかいいと思いました。終盤の盛り上がりで、小太鼓が3人に増えるところでは左右両翼に配置。サラウンド効果が出ていました。

■公演番号:227 ホールB7(ヴェルレーヌ) 21:15~22:00
ドビュッシーヴァイオリン・ソナタ
フランクヴァイオリン・ソナタ イ長調
オーギュスタン・デュメイ(ヴァイオリン) 
児玉桃(ピアノ)

今回唯一の器楽曲です。小ホールのチケットは本当に取りづらくなってしまいました。身長2m近い痩躯のデュメイも還暦過ぎて、見た目老けたなあ、と思いましたが、技術はまったく衰え知らずです。ナノレベルでジャストなタイム感が心地良く、音色は多彩。しかも児玉桃のピアノと完璧に一体化した音像を創り出していました。

そんな充実のLFJ2013中日でした。


2013年5月3日金曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013 ①

五月。連休初日の東京湾岸はまぶしい快晴です。

東京メトロ有楽町線に乗って、有楽町東京国際フォーラムへ。GW恒例のクラシック音楽フェス "ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013"。今年のテーマは"L'HEURE EXQUISE"「パリ、至福の時」ということで、フランスの作曲家のオーケストラ作品を中心にチョイス。

今日は有料公演をふたつ鑑賞しました。


■公演番号:112 ホールA(ボードレール) 12:15-13:00
ラヴェル亡き王女のためのパヴァーヌ」「ラ・ヴァルス」「ボレロ
サン=サーンス交響詩 死の舞踏 op.40
フェイサル・カルイ指揮 ラムルー管弦楽団

■公演番号:114 ホールA 17:00~17:45
サティ(ドビュッシー編)「ジムノペディ第1番、第3番
ドビュッシー牧神の午後への前奏曲」「交響詩 海
フェイサル・カルイ指揮 ラムルー管弦楽団

同じ指揮者とオーケストラで2公演ということになりました。こういう選び方もフェスならではです。このところちょっとさぼっていて、クラシックのコンサートに行くのが"ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012"以来1年ぶりでした。そのため昨年最後に聴いたロシアのオケとのギャップがすごかったです。

ロールキャベツにベシャメルソースをかけたみたいにこってりした演奏から一転、ボーダーのシャツを着こなしたお洒落で小粋なパリジェンヌがバゲット齧りながら散歩してるみたいな感じです。そもそもフランスのオケに重厚さや深みを求めるのは筋違いでしょう。

かといってチャラいテキトーな演奏というわけではまったくありません。「ボレロ」も「海」もここんちが初演という伝統あるオケらしく、正確でしっかりした技術を持っています。カルイ氏の指揮も暑苦しいところがなくて、指先までエレガントでした。

一番面白かったのはラヴェルの「ボレロ」です。まず15分程の曲で最初の10分ぐらいは指揮者が微動だにしない。たったふたつの旋律を、楽器を加えながら曲の頭からお尻まで時間をかけて徐々にクレッシェンドして(音量を上げて)いく構成ですが、終盤突然急激にデクレッシェンドする(音量を下げる)部分があり、最初は「放送事故?」っていうぐらいびっくりしました。二度、三度と同じフレーズに来るたびにデクレッシェンドが繰り返されると、ジェットコースターでレールの頂上から下降し始める瞬間のような、軽い眩暈のような感覚になりました。

ライブや録音で何度も聴いた「ボレロ」ですが、こういう解釈ははじめてで、とても新鮮でした。

明日は3公演、フォーレとフランクとドビュッシーと。楽しみです!