2012年12月24日月曜日

サウダージな夜 第25夜

去年につづき、クリスマスイブは古書ほうろうへ歌姫の声を聴きに行きました。普段は毎月最終金曜日の夜に開催されている吉上恭太さんのインストアライブ『サウダージな夜』。今夜は特別編です。

まず吉上恭太さんがひとりで2曲。恭太さんのソフトタッチな歌声とギターはボッサ・テイストですが、今日はギブソンのスチール弦ギター。ボルサリーノを斜にかぶりタートルネックのモスグリーンが書棚に映えます。

次に末森英機さんが登場して、宮沢賢治作詞作曲「星めぐりの歌」からはじまり「大きな古時計」に終わる4曲のメドレー。こちらはマーチンのヴィンテージギターです。

ゆるさは、女性ボーカル、アコギ×2、アップライトベース、メロディオン(SUZUKI製、ピアニカはYAMAHAの商標です←どうでもいい豆知識)の5人組。名前の通りゆるい演奏です。でもメロディがとても良くて聞かせる。披露した3曲「ほうじ茶ワルツ」「シモキタジョージ」「寝たくない夜」はいずれも名曲です。さんざんメンバーにいじられていましたが、ベースの中野さんがはじくタイトなリズムが存在しないはずのキックを幻聴させ、このバンドのサウンド面のキモになっています。ボーカルのあまのさん作のはんこをフィーチャーしたウェブサイトも超チャーミング。

吉上さんが再び現われて、ゆるさをバックに3曲。谷根千界隈や古書店をモチーフにした「ほしどろぼう」「ほんとうたと」「ほたる」。ゆったりと。まったりと。

そして歌姫、中村加代子さんが登場。4曲のカバーソングは、Ruth Brown "Lucky Lips"、雪村いづみ「ケ・セラ・セラ」、Petula Clark "Downtown"の中国語バージョン、Mel Torme "The Christmas Song"。中村さんは日本と台湾のハーフなのですが、中国語で唄うのは今夜がはじめて。少し紅潮したつやのある頬、くるんとカールした長いまつげと薄茶色の大きな瞳、静かな笑みをたたえた口元。誰もがその容姿に魅了されると思います。彼女の落ち着いたアルトの声が、平熱のまま観客を包み込み、古書店内にいた全員が幸福な気持ちになりました。

中村さんの歌をはじめて聴いたのは昨年の同じ日、同じ場所。彼女が前回人前で唄ったのもその夜。一年に一度しか聴けない歌姫の歌声が聴ける奇跡のような夜でした。


2012年12月23日日曜日

恋のロンドン狂騒曲

朝は曇っていた東京にも午後からすこし日が差してきました。そんな三連休の中日。日比谷TOHOシネマズ シャンテで『恋のロンドン狂騒曲』を鑑賞しました。ウディ・アレン監督作品は半年前に『ミッドナイト・イン・パリ』が公開されたばかりですが、本国アメリカでは『恋のロンドン狂騒曲』が先に公開されています。

 「人生は単なる空騒ぎ。意味など何ひとつない」という台詞を引用して始まるこの映画。シェイクスピアの『マクベス』を一応下敷きにしているらしいのですが、まったく原型をとどめていません。

ロンドン市内を舞台に、アンソニー・ホプキンスジェマ・ジョーンズの英国人夫妻、その娘ナオミ・ワッツと夫ジョシュ・ブローリンという二組のカップルを軸に、周囲を巻き込んで、惚れたの腫れたの、くっついたり別れたりするコメディです。

ウディ・アレンの映画はいつも、アッパーミドルクラスのしょうもなさを皮肉と愛情を込めて描いています。自分の老いを受け入れられないアンソニー・ホプキンスは、いつもラルフ・ローレンのオフホワイトのセーターを粋に着こなしている。離縁された妻ジェマ・ジョーンズはニュー・サイエンスというか、スピリチュアリズムに嵌る。このふたりが映画の他の登場人物たちをイラッとさせまくる。その姿に映画館が爆笑するという。

『ミッドナイト・イン・パリ』のような荒唐無稽さや、『ブロードウェーと銃弾』みたいな事件は起きないけれども、テンポのいい編集と熟練の演技で魅せる上質な大人の台詞劇といっていいんじゃないでしょうか。

この映画のいちばん良いところは上映時間。98分。これ以上でも以下でも成り立たない。物足りなさと腹八分目のぎりぎりのバランス。ウディ・アレンのほかの映画にも言えることですが、このやや短めの上映時間が、映画そのものの品の良さにつながっていることは間違いないです。二本立てとか、いろいろな要因があるにせよ、日本のかつての喜劇映画の傑作にも90分前後の作品が多かったのは偶然ではないと思います。


 

2012年12月21日金曜日

Poemusica Vol.12 ~音の葉・言の葉・柊の葉~

冬至。一年で一番夜の長い日。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPにて"Poemusica Vol.12 ~音の葉・言の葉・柊の葉~"が開催されました。

はらかなこさんのはつらつととしたピアノ。両手のバランスがとてもよく、明るくクリアな音色です。音がきれいなだけではなく、演奏する姿にも、MCにも、音楽が楽しくてたまらないという様子が客席に直接伝わってきました。クラシックをベースに、ジャズやR&Bのエッセンスを器用に取り入れた作曲スタイルにも品があります。かと思えば、観客に打楽器を配り、iPodに仕込んだドンカマに乗せて、右手でピアニカ、左手でピアノのベースラインを弾くクリスマスソング、WHAM! "Last Christmas"で会場を盛り上げるエンタテイナーぶり。楽しませてもらいました。

平井真美子さんは、Vol.2に続きPoemusicaには二度目の登場です。はらかなこさんの音大の先輩にあたりますが、実はこの日が初対面。同じピアノでも弾き手によってこれほどまでに音色が違うのか。一音一音に込められた感情が会場全体を覆っていく感じがしました。音を澄ませるところ、あえてぶつけたり、濁らせたりするところ。しっかりした技術と明瞭な意思に裏付けられているからこそ、弱音でも強音でも、はっきり伝わってくる。はらかなこさんが客席からその手元をガン見していたのが印象的でした。憧れとライバル心と。オルガニート(パンチカード式手回しオルゴール)2台でLittle Woodyとデュオ演奏した「きらきら星」もチャーミングでした。

そして、3か月ぶりにアニメーション作品で参加したLittle Woody。「(ねこのやつ)」「タコ兄弟」「Teeth War」という鉄板ネタに、今回新たに加わった「バラ王子」。頭にバラの花を乗せた王子が忍びの者に双子の兄を探させるというストーリーです。この新キャラがマジキュート。話もシュールで、画と台詞使いとに、あっけらかんとしたユーモアとインテリジェンスがにじむ、とても楽しい作品なのですが、その面白さを言葉で伝えられないのがもどかしい。会場に来てください!としか言いようがない(笑)。

僕はクリスマスにちなんだ詩を2篇。「(タイトル)」は、はらかなこさんに、「クリスマス後の世界」は平井真美子さんに、それぞれピアノの伴奏をつけてもらい朗読しました。それぞれの個性が出た素敵な演奏で、自分が朗読しているのを忘れて、マイクの前で聴き入ってしまいました。いつもより朗読に間合いが多かったとしたらきっとそのせいです(笑)。

当初予定されていたSoul Color(=Wyolicaのギタリストso-toさん) が体調不良により残念ながら欠場してしまいました。結果、ピアノソロのインストゥルメンタル2組と映像ということで、言葉を発するのは僕ひとり、とやや気負って会場入りしたのですが、全くの杞憂に。かなこさんも真美子さんもWoodyも、作品とパフォーマンスが言葉以上に雄弁に語っていました。

これで僕の2012年のライブはすべて終了しました。Poemusicaを一年間続けてきて、僕自身パフォーマンスの面で成長できた実感があります。忙しい平日の夜に会場に足を運んでくださったお客様、それぞれの場所で気にかけてくださったみなさん、このブログをいつも(ときどき)読んでくださった方々、素晴らしい共演者たち、SEED SHIPの土屋さん、ありがとうございました! Merry Christmas & Have a nice holiday!

そして、Poemusicaは2013年も続きます。新年スペシャルは本当にスペシャルなブッキングです。出演者6組はPoemusica史上最多。是非遊びに来てください!!

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Poemusica 新年スペシャル!
日時:2013年1月17日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
料金:予約2,000円 当日2,500円(ドリンク代別)
出演:
   平井真美子 *音楽  
   小野一穂 *音楽 
   島崎智子 *音楽 
   市川セカイ *音楽 
   Little Woody *アニメーション  
   カワグチタケシ *ポエトリー

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2012年12月12日水曜日

マンダラ2でワンツーワンツー!vol.2

2012年12月12日。気前良く数字が並んだ水曜日。吉祥寺MANDA-LA2へ。10月にアカリノートさんのライブイベント「あのかぜのゆくえ」で共演したmueさんが主催する『マンダラ2でワンツーワンツー!vol.2』に行ってきました。

この日mueさんはふたつのバンドセットで登場。まず、ら・ら・ら。ジャンベ/ガットギターの奈良大介さん、カリンバの小池龍一さんとのトリオです。ソロのときよりも若干ユルめの演奏。ネオ・ヒッピー・テイストのアフリカン・グルーヴが加わり、シンプルで空洞感のある音楽をにぎやかに奏でます。

それぞれが普段はソロで活動しているこのトリオは、誰がリーダ-という風ではなく、全員が曲を書き、リードボーカルをとります。歌詞もおおらかな感じ。小池さんのエレクトリック・カリンバ(親指ピアノ)が効いていました。もうすぐ出るファースト・アルバムからの8曲。奈良さんの8歳の息子さんが小さな手でジャンベを叩く姿に客席もほのぼのあたたまります。

そして、セカンドセットはmue。「あのかぜのゆくえ」では弾き語りでしたが、今夜は熊谷大輔さん(dr)、chubby!さん(b)と、こちらもトリオで。このリズムセクションが強力でした。キックとベースががっちり合って、そこにふんわりと乗るmueさんのギター。その歌声はまるで寒い朝に供される温かいポタージュスープのよう。 小柄で愛くるしいビジュアルと相俟って、会場全体を包み込む。

最近は自分から出てくるものを素直に歌にしているというmueさん。理不尽な想いや怒り。ネガティブな感情を唄うときも、けっしてとげとげしくなることはなく、世界に対する異議申し立ての仕方がとてもエレガントだな、と。サイケデリックな浮遊感のある新曲も素敵でした。

ゲストの田野崎文さん富山優子さんとのデュエットも、所謂イベントライブのセッション的なものではなく、とてもこなれたクオリティの高いもので、そんなところからも彼女の音楽に対する真摯な姿勢が心地良く伝わってきます。

MANDA-LA2にはグランドピアノがあるのですが、この音色も三者三様で面白かった。すきまが多いのにまっすぐな演奏をする田野崎さん。ひんやりと明晰なタッチの富山さん。輪郭のくっきりしたギターと同じ指で弾かれるmueさんのピアノはなんていうか、いい感じにくぐもっているんですよね。それはまるで、濃い霧の中を漂っているような。

最後に出演者全員で演奏したサンバ、「東京の夜」では、mueさんの身体能力の高さを存分に堪能。

毎年12月12日に開催されるこのライブ。来年は木曜日です。いまから楽しみがひとつ増えました!



2012年12月8日土曜日

砂漠でサーモン・フィッシング

東京はよく晴れた小春日和。丸の内ピカデリー1にラッセ・ハルストレム監督の新作『砂漠でサーモン・フィッシング』を観に行ってきました。前作『親愛なる君へ』から1年ちょっと。コンスタントに作品を発表しています。

英国大好きな中東の大富豪(アムール・ワケド)の代理人(エミリー・ブラント)が、ロンドンの水産学者(ユアン・マクレガー)に依頼したのは、イエメンの砂漠に作った人工河川でフライフィッシングできるように、鮭を自生・遡上させること。

気温、水温、水質、餌などの面から不可能であると判断し、一旦は断るが、国際政治上の要請と内閣広報官(クリスティン・スコット・トーマス)の策略によって巻き込まれ、気づくと荒唐無稽な夢の実現を信じて奔走していた。

理論的には可能(theoretically possible)というのが、この映画にはキーワードとして何度も登場します。理論的には可能だが、現実的には不可能と思われること。それを可能にするための莫大な富と、人を動かす信念。

ハルストレム監督はスウェーデン人ですが、この映画はBBC制作。良くも悪くも英国映画という感じがしました。抑制の利いたユーモアがあり、礼儀正しくて、枠からはみ出ることがない。『リトル・ボイス』(1998)や『キンキー・ブーツ』(2005)の感触に近いものがあります。変な人は出てくるのですが、妙にお行儀が良くて、落着きがある。

それが逆に、この映画の弱さになってしまっていると思います。大富豪はスコットランドの山間部に別荘をかまえ、イエメン人の守衛たちにキルトの制服を着せたりと変なところがあるのですが、何百万ポンド(数十億円)もかけて砂漠にダムを築き、一万匹の鮭を空輸するという割には、目つきに狂気が見えないんですよね。ユアン・マクレガーにしてもそれは同じ。

クリスティン・スコット・トーマス演じる高級官僚の俗物ぶりは笑えます。得票数目当てに全国200万人の釣りファンをゲットとか。あとね、戦争はいかんなあ、と思いました。恋人が戦地で行方不明なんて、想像するだに辛すぎる。その戦地がどこなのかってことも軍事機密で明かされない。そういう意味では、日本で今日公開されたのはタイムリーなのかもしれないです。


2012年12月1日土曜日

あすあづ&もぐらが一周するまで with TOGI☆LIVE!!

空気が乾燥してきました。風邪をひいたりしていませんか? 12月最初の土曜日は外苑前のギャラリーneutron tokyoへ。三尾あすか&三尾あづち 双子の姉妹展 2012 with friends 「Somewhere in nowhere ~どこでもないどこか~」に伴って開催されたライブペイントを観に行ってきました。

もぐらが一周するまで」はギタリスト佐藤亘氏の大量のエフェクターにつながれたフェンダーテレキャスターとトギリョウヘイ氏のジャンベ、シェイカーによるアナログ・チルアウト・ミュージック。Vini Reillyをもっと現代的にシャープにした感じといえばいいのかな。その演奏に乗せて姉妹がギャラリーの壁面に絵を描く約60分のライブパフォーマンス。

まず妹のあづちさん(左利き)が油性マジックで部屋のパースペクティブのような斜線を引き、仮定された床に赤いしみが広がる。姉のあすかさんは植物の生長を床面から上方へと伸ばします。そして幅の広い刷毛に持ち替えて、鮮やかな色彩と面が加わり、おばけ、骸骨、十字架、恐竜。危ういキャラクターが現われては塗りつぶされるうちに生じる激しい混沌。

あづちさんがアクリルを塗りこめ、そこにあすかさんが文字を重ねることで全体に秩序を与え、混沌を収束させていく。ふたりともとにかく手が速く、ライブならではのスピード感と偶発性を多分に感じさせる。協力というよりも対話のなかで衝突と和解を繰り返すような。

いままで彼女たちの完成した作品しか観たことがなかったのですが、あの透明な謎に満ちた色彩の重層は、このようなプロセスを経て誕生するのだ、ということがわかったのはうれしい発見。また、描くふたりの動きに無駄がなく、まるでコンテンポラリーダンスのような美しさがあります。

「あづが手のひらで描きはじめたのが可笑しくて、笑っちゃって」と、終演後にあすかさんが自身も笑いながらおっしゃっていました。実際描いているあいだも、時々小さな声で会話があり、しかめつらや笑い声もある。

今回のライブで特に印象に残ったのは、画幅に言葉を描き込むことによってパフォーマンスを終わらせたところ。エンドロールのような役割もあるのだとは思いますが、寡黙なふたりがその内側に押し込めたイメージを線や色彩だけでなく言葉(文字)も用いて表出させていることに現代性を強く感じました。

関西で活躍する新しい美術作家を紹介してきたneutron tokyoですが、ギャラリーとしての機能を今年末で一旦終了させるそうです。たくさんの素晴らしい作品・作家との出会いに、この場を借りて感謝したいと思います。



2012年11月25日日曜日

Liquid 1st Album RELEASE PARTY!!

三連休最終日は良く晴れた日曜日。下北沢CLUB251Liquidの1st Album"We are Liquid"リリース・パーティが開催されました。Workshop Lounge SEED SHIPのPoemusicaで毎月共演しているLittle Woodyのバンドの晴れ舞台とあっては見逃せない。小田急線に乗って出かけました。

Liquidは、ギターのイガヒロシ、ドラムス脇山広介、ウッドベースLittle Woodyの3ピース・インスト・ロック・バンド。結成9年目にしてはじめての公式盤がリリースされるということで、満員の会場は祝福ムードでいっぱい。

CDは鋭利な刃物のようにシャープな演奏で、この2ヶ月ほど愛聴していますが、ライブでは角材やセメントブロックでそこらじゅうをガツガツと叩き割るような無骨でワイルドなパフォーマンスを聴かせます(比喩です。実際に機材を壊したりはしません、笑)。

ジョー・ペリーばりにファンキーかつ歪みまくったギター。豪快なのにタイトなドラムス。Little Woodyは身体よりでかいウッドベースを回転させたり、よじ登ったりとロカビリー・マナーに則ったアクションのスラップベース。それでいて繰り出されるのは、ブルースをベースとしがら、懐古や感傷をかけらも感じさせない「今」の音楽。インテリジェンスとウィルダネスという相反する要素を生来のユーモアが継いでいる。

曲間のLittle WoodyのMCは、イガさんのツッコミと相まって、あいかわらずのユルさでしたが、そこからイントロへとなだれ込むときの胸のすくようなギャップといったら! オールスタンディングでオーディエンスがモッシュするようなライブは本当にひさしぶりでしたが、心底楽しめました。

ふたつの対バンもいい演奏をしました。BIGNOUNは、70年代っぽいアーシーなリフ主体のロックンロール。ボーカル、アコギ、ブルースハープのキムウリョン(ex.cutman-booche)のソングライティングセンスが光る。演奏にきらびやかなパーティ感があって、今日のオープニングにぴったり。ドラムスは松潤似のイケメン脇山広介がLiquidと兼任です。

PHONO TONESは、moqmoqさんのバンドあしのなかゆびにも参加している宮下広輔のペダルスチールをリード楽器に置いた循環コード主体のスペーシーなフリーミュージック。メンバー全員がヘッドバンギングするラウドな音楽なのに、なぜか中心には静寂が存在していて、その静謐な美しさはThe Album Leafにも通じるほど。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのドラマー伊地知潔の別プロジェクトです。

そんなLittle Woodyが新作アニメーションを披露する次回のPoemusicaは12月21日(金)。クリスマスパーティです。楽しみましょう!

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Poemusica Vol.12
日時:2012年12月21日(金) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
   世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
   03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
料金:予約2,300円、当日2,500円(ドリンク代別)
出演:Soulcolor*音楽 
   はらかなこ*音楽 
   平井真美子*音楽 
   Little Woody *映像  
   カワグチタケシ *ポエトリー 
いつもより開演時刻が30分早いので、ご注意ください!

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2012年11月23日金曜日

北のカナリアたち

晩秋の三連休初日。勤労感謝の日の東京は冷たい雨が降ったり止んだり。丸の内TOEI①で、坂本順治監督作品『北のカナリアたち』を観ました。

湊かなえの連作小説『往復書簡』を再構成したサスペンス・ドラマ。定年退職を迎えた図書館司書はる(吉永小百合)は、かつて教壇に立っていた利尻島の分校の生徒(森山未來)が殺人事件の重要参考人として手配されていることを知り、当時の教え子たちを訪ねて20年ぶりに北海道へ帰る。

東映創立60周年記念作品ということで超豪華キャストです。大人になった6人の生徒たちは、森山未來のほかに、満島ひかり勝地涼宮崎あおい小池栄子松田龍平。夫(柴田恭兵)の水難事故死の直後に島を去った先生に対して、それぞれがわだかまりを持って20年間生きてきた。

元々無理のある設定を、強引なストーリーテリングで読者を惹きつけ、意外性のある鮮やかな種明かしでカタルシスを提供する、というのがミステリーの基本的構造で、この映画にも当てはまるのですが、細部のつじつまが合わないところが多く思えて、物語に上手く乗れませんでした。

俳優陣の抑えた熱演と北の離島の厳しい自然を美しく捉えた木村大作のカメラが素晴らしいだけに、残念です。主演の吉永小百合は67歳とは思えない若々しさですが、髪型の変化だけで40歳に見せるのはさすがに厳しいのではないでしょうか。

子役たちの合唱はとても上手で心が洗われます。それと、20年前の悲劇の発端となったいさかいからずっと口をきいていなかった勝地涼と宮崎あおい(『少年メリケンサック』でもカップルを演じていた)が実はお互い想い合っていたことがわかったときに、宮崎あおいが「好き」と言うシーンにはきゅんとしました。



2012年11月16日金曜日

Poemusica Vol.11 ~オリジン~

東京の木々の葉も色づきはじめ、下北沢Workshop Lounge SEED SHIPにて"Poemusica Vol.11 ~オリジン~"が開催されました。当初予定していた尾上文さんが、残念ながら事情があって出演できなくなりましたが、にもかかわらずクオリティの高いライブになったのではないかと思います。

先月に続いてLittle Woodyはバンドで登場です。キーボードのVi-Taさんとデュオで全編即興のインスト。ワンコードのリフレインが即興でさまざまに変奏され、空間を広げていきます。ウッディいわく「アンビエント」。でも、ちゃんとヒューマンな感触のビートもあって、躍動感溢れ色彩豊かなクラブ・ミュージックです。ふたりの掛け合いだけでなく、Rio Nakanoさんとの音楽と絵画のインタープレイも鮮やかでした。

松本暁さん。尾上文さんからのご指名で急遽代役となりましたが、そんなことは微塵も感じさせない堂々としたパフォーマンスでした。彼とオープンマイクで出会ったのは、もう10年ぐらい前のこと。ひさしぶりに朗読を聴きましたが、端正で男前な作風はそのままに、抑揚や表現力が増していました。印象に残る強いリフレインと、言葉選びに独特のユーモアがあり、それは僕が持っていないものなので憧れます。SEED SHIPをモチーフにした即興詩も見事でした。

蜂谷真紀さんの演奏は衝撃的でした。冒頭アカペラで架空の言語を用いた歌とも一人芝居ともとれるボイス・パフォーマンス。複数の異なる言語を持つ、いろいろな世代、性別、階級の人たちが乗り合わせた客船上でのやりとり。のように僕には聴こえました。声だけなのにものすごいグルーヴ感があります。そしてピアノ弾き語り。弾き語り、なんて簡単にカテゴライズすることが無意味な音楽。まさに「音楽」としかいいようがない、すごいもの。蜂谷さんの演奏が進むにつれRioくんの絵の陰影が濃くなっていくのも面白かった。

Poemusicaでは初めてのライブ・ペインティング。Rio Nakanoさん。オリジナルのイベントロゴからはじまって、赤のアクリル絵具で塗りつくされた抽象表現。そこから女性の顔が立ち現れたときは鳥肌が立ちました。今度は白いアクリルで塗りつぶされ、途中途中で仕込んだマスキングテープをはがすと、過去の地層のように重層的な色彩が現われ、最後はまた別のロゴへ。時間が単線的に完成に向かわない絵画が、音楽と言葉とたがいに影響し合いながら紡がれていきます。約2時間半のあいだにすくなくとも4つのコンセプトが表出しました。

僕は今日は、「チョコレートにとって基本的なこと」「無重力ラボラトリー」「星月夜」「ボイジャー計画」「バースデー・ソング」の5篇を朗読しました。来年出版予定の新詩集に収める作品群で『計画』というグループ名をつけています。それぞれの詩に蜂谷真紀さんがピアノやゼンマイ仕掛けのおもちゃを使って音をつけてくださいました。「星月夜」には元少女兵士の声で架空言語による同時通訳まで。これにはまいりました!

そんな11月のPoemusica。ご来場くださったお客様、それぞれの場所で気にかけてくれたみなさん、いつも新鮮で素敵なブッキングをしてくれるSEED SHIPの土屋さん、どうもありがとうございました!

12月のPoemusicaも金曜日。クリスマス・バージョンでお届けします。デートや光熱費の支払いやでいそがしい時期だとは思いますが、ぜひ皆様お誘いあわせのうえ、SEED SHIPにいらしてください!

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Poemusica Vol.12
日時:2012年12月21日(金) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
   世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
   03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
料金:予約2,300円、当日2,500円(ドリンク代別)
出演:Soulcolor*音楽 
   はらかなこ*音楽 
   平井真美子*音楽 
   Little Woody *映像  
   カワグチタケシ *ポエトリー 

ピアニストの平井真美子さんとはPoemusica Vol.2以来の共演です。
いつもより開演時刻が30分早いので、ご注意ください!

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2012年11月10日土曜日

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ

先週土曜日と今日の2週にまたがって、ユナイテッドシネマ豊洲で、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』[前編]はじまりの物語、[後編]永遠の物語を観ました。

昨年TBS系列の深夜枠で放送され、幾多の賞に輝いた全12話を約5時間半に編集して映画化。公開から1ヶ月以上経つシネコンが満席で、エンドロールが流れても誰も席を立たないのが印象的でした。

キュゥべえ(インキュベーター=孵卵器)と呼ばれる人の言葉を話す小動物からスカウトされた女子は、どんな願い事でもひとつ叶えてもらえるかわりに、魔法少女になって魔女と戦わなくてはならない。ひとりひとりの魔法少女が持つ祈りが魔女を倒す特別な力となるが、戦いのうちにやがて妬み、憎しみ、呪いが増大し、エントロピーが臨界点を超えてしまうと、魔法少女自身が魔女になり、魔法少女に倒される側に転換してしまう。しかしそれは宇宙規模で仕組まれた熱エネルギー回収のためのシステムだった。

中二病(もしくは厨二病)。なにしろ主人公たちは中学2年生なので(マミ先輩は3年生)。郊外の城下町でぽけらんと過ごしていた僕ですら、中二の頃は、自分の内に譲れない、守るべきものがあり、手持ちの何かと引き換えに特別な力を得て(それはストラトキャスターのトレモロアームだったり、華麗なレトリックや重層的なメタファーだったりするわけですが、笑)、大きな敵と戦わなくてはならないと思っていました。

やがて反抗心は薄れ、守るべきものが自分の外にあると知り、違う世代、違う価値観を持った人たちと共生、融和する方向に関心が移って、いまの自分があるのですが、その姿を中二の僕が見たら「体制に取り込まれた」なんて青臭いことを言うかもしれません。つまりこの映画でいえば魔女の側へ。

最終的に宇宙の起源と愛や平和の概念にまで遡及する物語。そのストーリー構築の見事さ。アレゴリーと示唆に富んだ台詞。まるでモーツァルトの『魔笛』の登場人物たちのように敵対と友愛のあいだで揺れまくる魔法少女たちのなかで、唯一ぶれずに終始迷い続ける主人公まどか(上の画像の右から二人め)。劇団イヌカレーが手がけた切り紙細工や木版画のような二次元イメージで構成された魔女結界の造形美。見どころたくさんで、大人の鑑賞に耐えうる上質のアニメーション映画です。

2013年には新作映画『[新編] 叛逆の物語』が公開とのこと。こちらは黒髪の美少女ほむらが主人公になるのかな。楽しみです。



2012年11月4日日曜日

triola "Resonant ♯10"

1年でいちばん好きな月。図書館と落ち葉とツイードの11月。11月最初の日曜の夜。下北沢leteへ。triola弦楽コンサート"Resonant ♯10"。

2010年秋から2年。この会場で何度もtriolaを聴きましたが、これほどまでに痛みと悲しみに満ち、そしてたとえようもなく美しいtriolaの演奏ははじめて見ました。

東欧やイスラム圏の音楽にも通じる甘美な旋律をハードエッジなリフに乗せて力技で演奏するときに生じる軋み。それがtriolaの個性であり、最大の魅力です。

9月に開催された「トリオラのリリパ」でもオシレーターやサイレンのアナログ・ノイズは封印され、優雅で感傷的な音楽を奏でたふたりでしたが、その祝祭ムードからも離れて。

大きな水玉のチュニックを着て、髪をひとつに束ねヴァイオリンを演奏する波多野敦子さんは、繊細で壊れやすいい少女が、なにか別の知らない地平に立って途方に暮れているように見えました。ばらばらにちぎれそうな心を手島絵里子さんのヴィオラの安定感がかろうじて支えている。

「この曲を演奏するのはたぶんこれが最後」というMCとともに、カバーされたBurt Bacharachの"(They long to be) Close To You"は僕にとっても思い入れのある一曲。2010年末、波多野さんから「カバーを演りたいんだけど、いい曲ありませんか?」と訊かれて挙げたのがこの曲とSkeeter Davisの"The End Of The World"と荒井由実の「海を見ていた午後」の3曲。その後、1st Album "Unstring, string"に収録されました。

 クロース・トゥ・ユー

 なぜ君が近づいてくるといつも
 鳥たちが突然現れるんだろう?
 僕とおなじで みんな
 君のそばにいたいんだね

 なぜ君のとなりを歩くといつも
 星たちが空から降ってくるんだろう?
 僕とおなじで みんな
 君のそばにいたいんだね

 君がうまれるその日に
 天使たちが相談して
 夢を現実にしようって決めた
 それできらめく月の雫を
 君の髪に
 星明かりを君の瞳に

 街中の女の子が
 君を追いかけるのは
 僕とおなじで みんな
 君のそばにいたいから

 僕とおなじで みんな
 君のそばにいたいんだ

 詞: Hal David/訳: カワグチタケシ



2012年10月28日日曜日

Viola & Piano Duorecital vol.2

昨夜のライブの余韻の残る小雨の降る日曜日。中央線に乗って荻窪へ。名曲喫茶ミニヨンで開催された手島絵里子さん(Va)、明利美登里さん(Pf)の室内楽デュオリサイタルを鑑賞しました。

ドビュッシー:レントよりおそく
ブルッフ:ロマンス op.85
ショパン:マズルカ op.24-2 ノクターン op.9-2 ノクターン op.48-1
ビーバー:パッサカリア ハ短調
チャイコフスキー:「四季」より 1月 炉端で 4月 松雪草 10月 秋の歌
ドヴォルザーク:ソナチネ op.100
アンコール
・ドヴォルザーク:ユーモレスク

ヴィオラ奏者の手島絵里子さんは弦楽デュオtriolaのほか、最近特に注目を集めている蓮沼執太フィルのメンバーでもあります。そういったオルタナティブな活動のほかに、正統的なクラシックの演奏も行っています。

今回の演目では、ビーバーのパッサカリアがよかったです。僕は初めて聴くバロック中期の作曲家の無伴奏曲で、その対位法はtriolaを想わせるところがあり、ルーツを垣間見る楽しさを感じました。

あと、おふたりの生徒さんたちでしょうか。きれいなお母さんに連れられた裕福そうな小学生の女子たちが、演奏中の手元をガン見していたのが印象的でした。

昨日のライブ出演でも感じたのですが、音楽にしても、朗読にしても、出演者として、また、観客として、ライブに行くということはコミュニティに参加するということと同義だなあ、と。つまり、自分が身を置いているのと同じ空間にいる、たまたま居合わせた人たちは、何に興味を示し、どんなことに喜びを感じるのか。一部分でも共通するものが必ずあります。家でCDを聴いているだけでは、それを感じることはできません。

日本代表選手はみんな海外に移籍してしまったので、サッカーはもっぱらスカパー!で。ということをおっしゃる方がいて、それは確かにそうなのですが、プレイの質の問題だけではなく、スタジアムで選手と同じ温度と湿度の空気を吸って、生の歓声を聴いて、それをコンスタントに続けることでしか感じられないことがたくさんあります。そういった周辺を、ノイズも含めて丸ごと楽しむのもライブならでは。

そして、日曜の午後、街の片隅に、このようなサロンが存在していて、気軽に参加できるということは、なんて平和で、文化的で、素敵なことなのだろうと思いました。




2012年10月27日土曜日

風景の少年少女たち vol.7 あのかぜのゆくえ

渋谷センター街がハロウィンの狂騒に包まれた10月最後の土曜日。Poemusica Vol.7で共演したご縁で、アカリノートさんが主催するライブイヴェントに招いていただきました。「風」をテーマにしたこのライブは、アカリさん含む4組のミュージシャンに、ねもとなおこさんの絵画作品と僕の朗読で空間と時間を構成するという趣旨です。

各ミュージシャンの演奏の前に、一篇の詩を添えるという、このお話をいただいたときに、僕の役割は登場人物たちにすこしずつ関わりながら、時間の流れを整え、物語に統一感を与える、たとえていえば、シェイクスピアの『夏の夜の夢』の妖精パックのようなものだと認識しました。そのため事前に共演者の情報を動画等で得ましたが、生演奏はいずれもそれを軽く超える素晴らしいものでした。

mueさん。赤いタータンチェックとデニムの切り替えワンピース姿で登場。森に暮らす小動物のような愛くるしいビジュアルで、大きなガットギターを抱え、タイトなリズムで複雑なテンションを多用したプレイを聴かせます。それがとても自然で、ちっともすごそうに見えないのは、冬の日だまりみたいにほんわかと心地良い歌声のせいでしょうか。The Beatles "Here Comes The Sun"のカバーもお見事でした。

阪本正義さんは、アカリさんが紹介していた通り、大陸を吹くおおらかな風のような音楽を奏でます。年輪を感じさせる枯れた深みのある歌声、ブルージィでロマンチックな歌詞、正確で抑揚のあるスリーフィンガー。ベテランらしい余裕のあるステージングで、ゆったりとした空気を創ります。なによりも唄っている姿が楽しそうで、歌が大好き、ということがひたひたと伝わってきます。

鴇田望トリオは、ピアノ鴇田望さん、ベース日向克典さん、ドラムス米沢ジョンさんの三人組。日向さんは4ビートの曲ではウッドベースを16ビートの曲ではエレキベースを弾きます。ジャズ/フュージョンのオリジナル曲はすべて歌詞を持たないインストゥルメンタルですが、お互いの演奏で饒舌に会話しているような印象を持ちました。ノスタルジーに走らない、21世紀のジャズ。ジョン!

アカリノートさん。いつも通りのロマンチックでセンチメンタルな音楽をすこし濁りのあるスチール弦と良く伸びる声で唄うのですが、それらの各エレメントがいつもより多めで、このイヴェントに対する力の入りようを表していたように感じました。鴇田望さんのピアノもアカリさんの声に良く合っていました。

僕が朗読したのは、オープニング、そしてmueさんの呼び出しに「風の生まれる場所」、阪本さんの前に「風の通り道」、鴇田望トリオさんに「新しい感情」、アカリさんには「風のたどりつく先」を贈りました。「風」がタイトルに入っている3篇は今回のライブのために書き下ろした新作。「新しい感情」も冒頭に風のシーンが入ります。

それらのパフォーマンスを控えめに包み込むように見守るねもとなおこさん5枚の絵画作品。いろいろな模様の水玉を描いているようにみえますが、実はエアパッキン(プチプチ)に絵具をつけて紙にスタンプしたもの。そこに抽象化された風景や夜空が描き込まれています。事前に読んでもらっていた「風の生まれる場所」をイメージして制作してくださいました。規則的に並びながらも、不規則に皺のよったプチプチのひとつひとつに内包された風。それらの痕跡。吊り下げられたペーパーフラワーが時折揺れて、地下のライブハウスにも風が吹いていることを僕たちに知らせてくれます。

そして最後に、僕の詩にアカリさんが曲をつけて、客席から2声のコーラスも加わり、みんなで演奏した「風の生まれる場所」。

いろいろな事象が調和した幸福な夜でした。知り合って間もない僕に今回の大役を担わせてくれたアカリノートさんはじめ共演者のみなさん、お客様、Wasted Timeの美人スタッフのおふたり、どうもありがとうございました!

そんなこんなで、10月も終わり。僕にしては異例の4本のライブを無事にやり遂げることができました。協力してくださった皆様、どこかで気にかけてくださった皆様に感謝したいです。でも、次のがもうすぐそこなんですけどねー。

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Poemusica Vol.11 〜オリジン〜

日時 :2012年11月16日(金)open18:30 start19:00
会場 :Workshop Lounge SEED SHIP
     世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
     03-6805-2805 
料金 :予約2,300円、当日2,800円(ドリンク代別)
出演 :蜂谷真紀 *音楽
     Little Woody Band *音楽
     Rio Nakano *Live Painting
     尾上文 *ポエトリー
     カワグチタケシ *ポエトリー 

※11月のPoemusicaは金曜日。伝説のポエトリー・リーダー尾上文
 (ex.ボーイ・ミーツ・ガール)が登場します!

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2012年10月20日土曜日

NAKED SONGS VOL.4 -Rolling Words Revue-

"Poemusica Vol.10"の2日後、東京メトロと小田急線を乗り継いで下北沢Lagunaへ。NAKED SONGS VOL.4にオープニングアクトとして出演しました。-ROLLING WORDS REVUE-と副題のついたこのライブイベントは、洋楽ロックの邦訳カバーとミュージシャンによるポエトリー・リーディングがテーマです。村田活彦さんを通して主催者の若松政美さんをご紹介いただき、今回出演することに。

最近だとRickie Lee Jones の"The Devil You Know"を愛聴している僕はカバーソング、カバーアルバムが大好き。なので、とても楽しめました。

当日披露されたロッククラシックはこの13曲。

村田活彦(リーディング)
Coldplay "In My Place"、Tetes Raides "Ginette"

■カワグチタケシ(リーディング)
David Bowie "Life On Mars?"、Aztec Camera "We Could Send Letters"

■ストウタカシ(THE FROCKS)&なとちん(Relational Being
Neil Young "Shots"、David Bowie "The Man Who Sold The World"、Velvet Underground "I'm Waiting For The Man"

MIO
Bob Marley "No Woman, No Cry"

■篠原太郎(THE BRICK'S TONE)&CROSS(the LEATHERS
Tom Waits "Tom Troubert's Blues"、Bob Dylan "Forever Young"、Bruce Springsteen "New York City Serenade"、Procol Harum "A Whiter Shade Of Pale"(リーディング)、The Rolling Stones "Sympathy For The Devil"

ストウさん(UK)&なとちんさん(USA)、篠原さん(UK)&CROSSさん(USA)という組み合わせも面白く。アメリカンロックには「ここから出ていくぜ」って歌が多いけれど、イギリスは島国で出ていくところがないから鬱屈していて、でもその鬱屈ぶりにユーモアがあって好きだなあ、なんてことを思いながら聴いていました。

カバー以外にオリジナル曲や自作詩の朗読もあり、あれよあれよいうまの3時間半でした。

あと、ロックなライブイベントということで僕は、ソニックユースのTシャツ、ニルヴァーナのニットキャップ、ゲッタグリップのスチールキャップシューズと手持ちのロックアイテムを総動員していったのですが、なんかそういうことじゃなかったみたい(笑)。

さて、ライブづくしの10月も、残すところあと1本になりました。最後までやり切りますので、どうぞお付き合いください!

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アカリノート企画イヴェント
風景の少年少女たちvol.7「あのかぜのゆくえ」
日時 :2012年10月27日(土)open18:30 start19:00
会場 :渋谷 Wasted Time
    渋谷区宇田川町31-3 第3田中ビルB1F
    03-3461-8383 http://www.wastedtime.jp/
料金 :2,000円+2order
act  :阪本正義鴇田望トリオmueアカリノート  
art  :ねもとなおこ  
poem :カワグチタケシ 
ご予約・お問い合わせ ringoman516@hotmail.co.jp
※Poemusica Vol.7でごいっしょしたアカリノートさんのライブに招いていただきました。ミュージシャンと画家との共演。風をテーマにした新作の詩を三篇披露します!

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2012年10月18日木曜日

Poemusica Vol.10

金木犀の香る雨の茶沢通りを下ってSEED SHIPへ。毎月第三木曜日はPoemusica。あいにくのお天気にもかかわらず駆けつけてくださったお客様、地球のどこかで応援してくれたみんな、共演者のみなさん、SEED SHIP土屋さん、どうもありがとうございました。

ひげの似合うロン毛のイケメン、Vi-Taさんから今夜のショーは始まりました。リリカルでソフトタッチのジャジーなキーボードで、優しく、強く歌います。オトナのロック。後半はエレピのトーンに切り替えて、ミニマルなリフを繰り返し、会場をドープなうねりに包んでいきます。最後は"Over The Rainbow"をドラマチックに歌い上げて客席を沸かせます。SEED SHIPの白い壁に、真っ赤なパーカーと同色のnord electro 3 HPが鮮やかに映えました。

次に、村田活彦さん。10月のPoemusicaは変則シフトで、はじめての詩人2名体制です。「ミルク創世記」「台所を冷やすな」「詩人の誕生」の3篇を自作のトラックに乗せて朗読。村田さんの朗読を聴くと、村田さんはいつでも村田さんだなあ、と思う。高いスキルを持ち、小ざっぱりしたいでたちで、誠実なパフォーマンスをするのに、どこに置いても場に馴染まない異物感は本物か。

そして、Little Woody Bandが登場。アップライトベースLittle Woody、キーボードVi-Ta、ウクレレ、コンサーティーナ、ボイスmoqmoqの三人。ベースのミュートをサンプリングしてキック音を作り、循環和音をかぶせて、ファットでドリーミーでトリップ感満載の即興演奏を繰り広げるのですが、これが楽しかった。更に、ポエトリーラッパーgnkosaiも加わり、いままでのPoemusicaにはないアシッドな雰囲気に。僕も一曲参加して、「今日のテーマは秋から冬!」というリハーサル時のウッディの言葉に乗っかってAztec Cameraの"Walk Out To Winter"カワグチタケシ訳をリーディングしました。

僕の本編も同じくFall into Winterで構成。Little Woody Band の興奮でざわつく客席に向かって、できるだけ小さな声で「無題(静かな夜~)」。"Walk Out To Winter"と同じイントロダクションを持つ「無題(出会ったのは夏のこと~)」。10月の詩「」「山と渓谷」。新作「新しい感情」を朗読しました。連のあいだで声が途切れると窓の外の雨音が聞こえます。

トリはmoqmoqことオカザキエミさん。4月のPoemusica Vol.4にトリオ編成で出演していただきましたが、今回はソロで。エディ・ヴェダーばりにエッジの効いたウクレレ、歌いながら弾いても絶対にテンポの乱れないカリンバ(親指ピアノ)、甘く感傷的なコンサーティーナは、どれも小さくて愛らしい楽器です。ティンパンアレイの流れを汲む正統的なポップソングのメロディと抒情的で季感溢れる歌詞。そしてソウルフルで適度な湿り気と艶のある歌声。端正で優雅なステージマナー。それらすべてを兼ね備えた最高の音楽家です。地元湘南でのライブ活動が中心で、都内では聴く機会が少ないのが残念でなりません。

次回のPoemusicaは11月16日。いつもと違い金曜日の開催です。蜂谷真紀さんRio Nakanoさん(ライブペインティング)、尾上文さん(ポエトリー)、Little Woody Bandとカワグチタケシでお届けします。お楽しみに!

それから、今週来週と土曜日にライブが続きます。こちらもどうぞよろしくお願いします! 

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NAKED SONGS -ROLLING WORDS REVUE- vol.4
日時:2012年10月20日(土) Open 17:30 Start 18:00
会場:下北沢Laguna
   世田谷区北沢2-2-3 エルサンド北沢1F
   03-6903-4185 http://www.daisybar.jp/laguna/
料金:予約2,800円、当日3,000円(ドリンク代別)
出演:篠原太郎(THE BRICK'S TONE)、CROSS(the LEATHERS)、
   ストウタカシ(THE FROCKS)、なとちん(Relational Being)、MIO
   村田活彦カワグチタケシ     
※洋楽ロックの邦訳カバー、ミュージシャンによるポエトリー・リーディングをテーマにしたライブイベントのオープニングアクトを務めます。またまた村田活彦さんといっしょ!

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アカリノート企画イヴェント
風景の少年少女たちvol.7「あのかぜのゆくえ」
日時 :2012年10月27日(土)open18:30 start19:00
会場 :渋谷 Wasted Time
    渋谷区宇田川町31-3 第3田中ビルB1F
    03-3461-8383 http://www.wastedtime.jp/
料金 :2,000円+2order
act  :阪本正義鴇田望トリオmueアカリノート  
art  :ねもとなおこ  
poem :カワグチタケシ 
ご予約・お問い合わせ ringoman516@hotmail.co.jp
※Poemusica Vol.7でごいっしょしたアカリノートさんのライブに招いていただきました。ミュージシャンと画家との共演。風をテーマにした新作の詩を三篇披露します!

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2012年10月8日月曜日

御来場御礼

前日降った雨が上がり、東京は明るい秋の日に。芸工展2012勝手に協賛企画 Double Takeshi Production Presents Poetry Reading Series vol.06 Thousandth Kitchen Revue(サウザンス・キッチン・レビュー)が千駄木の古書ほうろうにて、にぎやかに開催されました。客席には懐かしい顔も。はじめましての皆様も。御来場ありがとうございました。

休憩をはさんできっかり2時間のプログラム。4人の詩人がそれぞれの声を古書店に響かせました。お楽しみいただけましたでしょうか。

ひとりめは京都出身で現在茨城在住の小森岳史。ダブルタケシのデカいほうです。新作詩集『みぞれ』収録の作品を中心に朗読。出会ったころはがりがりに痩せていて、大きな眼球だけがぎょろりと目立つ顔でしたが、体型も声も落ち着きました。彼の詩はいつもダイアローグ。時には辛辣に、時には優しく読者や観客に語りかけ、問いかけます。究極Q太郎の「あるホームレス」は僕も何度か朗読したことのある作品ですが、小森さんの声に似合っていました。

大阪生まれ京都在住の豊原エスさんは、この日のぞみに乗ってやって来ました。彼女の詩はモノローグ。最小限に切り詰めた言葉で、自己の内面をひたすら問い詰めていく短詩型が得意のスタイルです。それを声というメディアに乗せて観客に向けて発するときに生じる異物感。聴いている人たちも同時に自らへ問いを発しているような。それが、最近書いた作品には風景描写や他者との関わりが控えめに加わり、徐々にひろがりを見せているように思います。

児玉あゆみさんは大阪生まれの横浜育ち。女子高生デビューした天才肌の詩人です。美しく早熟で多感なゆえに受けた傷も多く、当時の彼女の詩にはその痛みと戦うようなひりひりする感触が溢れていました。すこし大人になったいま、傷は傷のまま目をそらすことなく、しかも同時にその痛みを自己の内部にしっかりと固定し、具体的なレトリックとして聴衆に差し出すことができるようになりました。声だけでなく、しぐさ、視線、息づかい、そのたたずまいのすべてが作品。彼女のパフォーマンスが、この日一番客席に届いたのではないでしょうか。イベントタイトルにちなんだ「キッチン」という作品をラストにもってくる器用さも見せ。まだ24歳。これからが本当に楽しみです。

僕はまず「コインランドリー」をカセットに録ったローファイ・ブレイクビーツで。次に「Universal Boardwalk」、開場した客席に中村加代子さんがいるのを見つけて演目に入れました。小森さんのウェブサイトtrixistextsで一年間、中村さんのショートストーリーのお隣に連載していた詩です(中村さんは現在も連載継続中)。終演後、この詩の朗読についてコメントをもらえたのもうれしかった。そして新作の「新しい感情」、古書ほうろうさんのブログで紹介してもらった「星月夜」の4篇を朗読しました。

そんな秋の一夜でした。会場をご提供いただいた古書ほうろうの宮地さん、ミカコさんには準備段階から大変お世話になりました。いつもあたたかく見守ってくださってありがとうございます。

TKレビューは終わりましたが、10月はこのあとライブが3本入っています。どうぞよろしくお願いします!

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Poemusica Vol.10
日時:2012年10月18日(木) Open 19:00 Start 19:30
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
   世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
   03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
料金:2,300円(ドリンク代別)
出演:moqmoq*音楽 
   Little Woody Band *音楽  
   村田活彦 *ポエトリー 
   カワグチタケシ *ポエトリー 
   他
※毎月第三木曜日は詩と映像と音楽の夜Фポエムジカ。今月ははじめての詩人2名体制で。音楽はPoemusica Vol.4で伝説的な演奏を繰り広げた「焚き火バンド」不動のセンターmoqmoqさんと、いつもPoemusicaではアニメーションを担当しているLittle Woodyのバンドです!

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NAKED SONGS -ROLLING WORDS REVUE- vol.4
日時:2012年10月20日(土) Open 17:30 Start 18:00
会場:下北沢Laguna
   世田谷区北沢2-2-3 エルサンド北沢1F
   03-6903-4185 http://www.daisybar.jp/laguna/
料金:予約2,800円、当日3,000円(ドリンク代別)
出演:篠原太郎(THE BRICK'S TONE)、CROSS(the LEATHERS)、
   ストウタカシ(THE FROCKS)、なとちん(Relational Being)、MIO
   村田活彦カワグチタケシ     
※洋楽ロックの邦訳カバー、ミュージシャンによるポエトリー・リーディングをテーマにしたライブイベントのオープニングアクトを務めます。またまた村田活彦さんといっしょ!

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アカリノート企画イヴェント
風景の少年少女たちvol.7「あのかぜのゆくえ」
日時 :2012年10月27日(土)open18:30 start19:00
会場 :渋谷 Wasted Time
    渋谷区宇田川町31-3 第3田中ビルB1F
    03-3461-8383 http://www.wastedtime.jp/
料金 :2,000円+2order
act  :阪本正義鴇田望トリオmueアカリノート  
art  :ねもとなおこ  
poem :カワグチタケシ 
ご予約・お問い合わせ ringoman516@hotmail.co.jp
※Poemusica Vol.7でごいっしょしたアカリノートさんのライブに招いていただきました。ミュージシャンと画家との共演。風をテーマにした新作の詩を三篇披露します!

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2012年9月30日日曜日

王様とボク

暑かった9月も今日で終わり。台風の前の明るい午前、ユナイテッドシネマ豊洲で、やまだないと原作、前田哲監督『王様とボク』を鑑賞しました。注目の若手俳優が共演するこの映画。単館上映で、都内では新宿と豊洲だけ、という謎の配給。豊洲が舞台なわけではないです。

6歳のときブランコから落ちて昏睡状態にあったモリオ役に菅田将暉仮面ライダーW)、事故現場にいたふたりの幼馴染、ミキヒコ役にNHK朝ドラ『梅ちゃん先生』で全国区になった左利きの松坂桃李シンケンレッド)、トモナリ役に相葉裕樹シンケンブルー)。ジュノンスーパーボーイから戦隊モノのヒーローという王道キャリアを歩む3人。そしてモリオの恋人キエ役に二階堂ふみ

12年間の昏睡期間に身体だけが成長し、精神的には6歳のまま。それでも、親友の長い眠りからの目覚めを屈託なくよろこび、共に生きていこうとするミキヒコ。「忘れたりしねえよ、だいたいのことは。忘れたふりしてんだよ」と、最後までモリオと会おうとしないトモナリ。「お前らは何か起きないと面白くないんだろ。俺は何も起こんなくても面白いんだよ」と屈託ありまくり。

そんな男子3人のがんばりにもかかわらず、映画全体の印象をひとりで攫ってしまう二階堂ふみの大物女優ぶり。『ガマの油』といい、『熱海の捜査官』といい、『ヒミズ』といい、無邪気で、天真爛漫で、傍若無人に人の気持ちに土足でずかずか踏み込むような役を演じたら当代一。なので、無邪気で、天真爛漫で、傍若無人な女子に土足でずかずか踏み込まれたい人は必見。

板倉陽子のカメラワークは淡く明るく優しい光に満ち、川内倫子の写真集をめくっているみたい。吉岡聖治のサウンドトラックと調和して、静謐な画面を構成しています。主人公たちの衣装もお洒落な、約80分の可憐な小品。

 

2012年9月29日土曜日

Thousandth Kitchen Revue

2007年秋に小森岳史と始めたポエトリー・リーディング・ショー"TKレビュー"が6回目を迎え、今回もレアな女子ゲストをお迎えして、10月8日体育の日、谷中に帰ってきます。
小森岳史カワグチタケシのイニシャルはともにTK。ということで名づけたTKレビュー。現在ほぼ年一回のペースで開催しています。

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芸工展2012勝手に協賛企画
Double Takeshi Production Presents Poetry Reading Series vol.06
Thousandth Kitchen Revue(サウザンス・キッチン・レビュー)

日時:2012年10月8日(月・祝) Open 17:30 Start 18:00
会場:古書ほうろう 東京都文京区千駄木3-25-5 03-3824-3388 
料金:1000円
出演:豊原エス児玉あゆみ小森岳史カワグチタケシ 

■会場の地図はこちら
■TKレビューのアーカイブはこちら

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僕個人の最近の活動としてはミュージシャンとの共演が多かったのですが、今回のライブは全員が詩を朗読します。

豊原エスさんは京都から。左京区サブカルシーンには欠かせない一人。東京でのライブはひさしぶりです。

16歳の児玉あゆみさんの登場は衝撃的でした。あれから8年。最近はライブを控えめにしていましたが、2年ぶりに表舞台に立ちます。

会場の古書ほうろうは千駄木の名店、不忍ブックストリートの中心的な存在。本好きな人なら必ず掘り出し物に巡り合えるお店です。

この日前後は芸工展2012という、谷中、根津、千駄木エリアの各所、カフェやギャラリー、アパート、銭湯、神社仏閣で、たくさんのアートイベントが開催中です。秋の下町散策のついでに、皆様お誘いあわせの上、是非ご来場ください!




2012年9月22日土曜日

村田活彦 poetry reading ソロライブ 2012秋

清澄白河を流れる掘割、小名木川が隅田川に接続するポイントにかつてあった深川芭蕉庵は『奥の細道』の出発地です。その一角にあるそら庵は、木造の印刷工場を改装した、インクの匂いの残るカフェ。村田活彦さんのソロライブで受付と物販のお手伝いをしました。

5月の「新・同行二人」では、ギターの生演奏をバックに朗読していましたが、今回は自作の打ち込みトラックを全編に使用。これが、70~80年代のブラックコンテンポラリーをベースにした緻密なつくりのもので、とてもオーソドックスであることが、リーディングの特異性を引き立てていました。

村田さんの声は、明るく、良く通り、色気があって、滑舌が良く、朗読の技術も確かなので、ひとつひとつの言葉がきちんと聞き取れます。ヒップホップのグルーヴとも散文朗読の流れの心地良さとも違う、何か過剰に農耕民族的とでもいうような響きがあり、その異物感、滑稽味が特徴です。囃子のリズムに乗せた「星まつり」で特にその感じが際立っていました。

技術があるがゆえに無難に流れてしまう部分もあるのですが、「Tシャツのこと」の終盤にピアノの旋律とユニゾンで「ラララララランラン、ランラランララン」と鼻歌のような心許ない声で唄うところ、「詩人の誕生」でめずらしく噛んで言い澱むところ、急に素に帰るそんな場面が妙にリアルで、記憶に残りました。

トラックを収めたiPod nanoの選曲をするときのカタカタいう音、モータードライブのシャッター音、上階のfukagawa bansho galleryを歩く頭上の足音、窓の外のカモメの鳴き声。朗読以外のいろいろな小さな音にも耳をすませた約100分のパフォーマンスでした。

そんな村田活彦さんと僕が共演するライブが、前回エントリーでご紹介した"Poemusica Vol.10"の2日後、10/20(土)にもうひとつ。下北沢Lagunaで開催されるミュージシャンによるスポークンワーズと洋楽の邦訳カバーがテーマのライブ"Naked Songs"のオープニングアクトを務めます。どうぞよろしくお願いします!

 

2012年9月20日木曜日

Poemusica Vol.9

東京の蒸し暑さも今日まで。そんな The last day of Summer。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPで"Poemusica Vol.9"が開催されました。

中村ピアノさん。『魔女の宅急便』のキキみたいな(自己申告ベース)黒のワンピースに大きなリボンカチューシャ。ぎざぎざの短い前髪の下には大きな瞳。真っ白な肌ときれいな歯並び。どこをとっても愛らしいお嬢さんですが、小柄で華奢な身体から繰り出すレンジの広いピアノと良く通る澄んだ声でダイナミックに聴かせます。あえて不協和音を鳴らす勇気もあって。曲調もバラッド、ロックンロール、ワルツと多彩ながら、一本筋の通ったところがあるのは、歌詞の主人公のキャラクタライズがしっかりしているからなのでしょう。ベースとドラムスを加えたトリオpique(ピケ)でも活躍中です。

Dancing Rabbitのギター&ボーカル、Shuhei Yasudaさんは北海道出身の24歳。スチール弦のアコースティックギターとループステーションで複雑なリフを作り、内省的な歌詞をときには囁き、ときには力強く重ねていきます。ボーカルの振れ幅の大きさはシューゲイザーやグランジの影響を感じさせますが、サンプリングマシーンを通していても、とても人間的で荒削りなリズム。時折ブルージィなトーンを垣間見せる演奏を聴きながら、なんとなくBECKの超初期のアルバム"One Foot in the Grave"を思い出していました。

background of the musicは、ギターの田中幹人さんと、キーボードの松本径さんのインストゥルメンタル・デュオ。ふたりとも大阪出身で現在は東京在住です。ガットギターとエレピのソフトな音色で、完璧に息の合ったアンサンブル。優しく、穏やかで、ピースフル。数多くのアーティストたちをサポートしてきた実力のあるミュージシャンですが、けっして音を詰め込むことなく。まるで腕利きの料理人が丁寧に丁寧にアクを掬って澄みきった出汁を取るように、極限までエッジを排除した音楽は、逆にエロティックですらあります。

ツアー先からの高速バスがひどい渋滞に巻き込まれたLittle Woodyですが、なんとか本番に間に合いました。いろいろな架空の動物たちが登場する、センス・オブ・ワンダーに満ちた新作ショートアニメ『YONONAKA』よかったです。

僕は今回は「月」が出てくる詩を3篇。「無題(静かな夜~)」。新作の「虹のプラットフォーム」。そして「水の上の透明な駅」では、background of the musicのおふたりに音楽をつけていただきました。本番数分前にご提案をもらい、作品を読んでくださって、リハーサルなしで、ぴったりの音を奏でる姿に、幾多の過酷な現場をこなしてきた匠の技を見る思い。とても気持ち良く朗読させていただきました。ありがとうございます。

ポップミュージック、ロック、インストゥルメンタル、映像、詩と、異業種が交錯するPoemusicaの楽屋は、楽しいカオスになること多々。この日は、ジブリと登山とゆとり世代と猫と江東区(松本さんと僕の地元)の話で楽しく盛り上がりました。

さて、次回"Poemusica Vol.10"は、10月18日(木)の開催です。Poemusica Vol.4で伝説的な演奏を聴かせた"焚き火バンド"不動のセンターmoqmoqことオカザキエミさんがソロで、そして村田活彦さんの出演が決まり、はじめての詩人2名体制で皆様をお迎えします。どうぞよろしくお願いします!

2012年9月16日日曜日

トリオラのリリパ

このブログでは何度も紹介している作編曲、ヴァイオリンの波多野敦子さんとヴィオラの手島絵里子さんによる最小単位弦楽アンサンブルtriola。彼女たちが、triola名義としては最初のアルバム"Unstring,string"を5月にリリース。『トリオラのリリパ』が原宿VACANTで開催されました。

アットホームな雰囲気のパーティ。個性的な食材を複数の出汁で料理する波多野さんの手際に、画家の足田メロウさんやダンサーの木村英一さんといっしょに、波多野さんのご自宅の鍋に招かれたときのことを思い出しました。

そんなパーティムードを反映してか、今日のtriolaはノイズを封印。新譜に収録されている楽曲を中心に、ひたすら美しく優雅に演奏します。インスト曲はふたりで、ボーカル曲はトオヤマタケオさんのフェンダー・ローズ(電子ピアノ)と千葉広樹さんのウッドベースを加えて。

実はtriolaのライブをPAを通して聴くのははじめてだったのですが、いつものふたりのtriolaも四人編成も素晴らしかった。ヴァイオリンとヴィオラの中高音域だけで構成されるデュオの面白さ。ベースの低域とローズの柔らかな和音が重なることで生まれる落着きと拡がり。波多野さんの歌声はヴァイオリンの演奏とは対照的に、決して強いものではないのですが、その繊細さを良く引き立たせる抑えの利いた演奏でした。ただ、ひとつだけ残念だったのは、会場のサイズに比して音量が小さかったこと。とても綺麗な音で、聞こえづらくはありませんでしたが、もっと音圧を感じたかった。

倉地久美夫さんは、10年程前に『詩のボクシング』で観たときと印象変わらず。基本ユルい雰囲気でギミックの利いた歌を唄うのですが、後半triolaのふたりが加わると良い感じに緊張感が出ました。かといって弦楽演奏が前に出過ぎることはなく、波多野さんのアレンジャーとしての力量を感じさせます。

宇治出身の兄弟デュオ、キセルの音楽の素晴らしさはみなさんご存じの通りです。良いメロディと丁寧に練られた歌詞を、誠実かつアイデア溢れる演奏で聴かせます。triolaの弦が加わると更に奥行が増し。その圧倒的な浮遊感はフィッシュマンズの正統な継承者と呼んでも差支えないと思います。

アンコールの最後に出演者全員で演奏したブレヒト/ワイルの"Mack The Knife"の選曲も波多野さんらしいヒネリの利いたものでした。

会場のVACANTは原宿の裏通りにある、まだ新しい木の匂いのするハコ。その名を聞いてSex Pistolsの"Pretty Vacant"を思い浮かべてしまった僕は1965年代生まれのPUNK第一世代です(笑)。でも、男子トイレの壁にはJoy Division "Unknown Pleasure"のポスターが。あながちはずれではないのかもしれません。


 

2012年9月8日土曜日

夢売るふたり

西川美和監督の前作『ディア・ドクター』が現実になったかのような偽医師のニュースがあったその当日に公開された新作映画『夢売るふたり』をユナイテッドシネマ豊洲のレイトショーで鑑賞しました。

「この都会の暗い地面には、自分の光を失った星たちがたくさん散らばっている」。

築地あたりで居酒屋を開いていた夫婦(松たか子阿部サダヲ)は、火事で店を失ってしまう。再建の資金稼ぎのために始めたのは、妻が計画し、夫が実行する結婚詐欺。心に闇を抱えた女たちを次々に騙していくが、ふたりの心も次第に蝕まれていく。

松たか子の現時点における代表作といえば、湊かなえ原作の『告白』だと思いますが、この『夢売るふたり』も将来キャリアを振り返ったときに必ず挙げられる一本になるはずです。楽天的で前向きな妻が、自ら計画した詐欺によって他の女と関係する夫に対して嫉妬心を持つ。その割り切れない感情を、最小限の台詞と抑えた表情で上手にかつ自然に表現しています。

序盤の田中麗奈から一連の詐欺は、ジョージ・ロイ・ヒル監督の『スティング』なんかにも通じる痛快さ。それが、デリヘル嬢(安藤玉枝)、ウェイトリフティング日本代表候補(江原由夏)あたりから、徐々に騙す相手に感情移入して、気持ちが揺れる阿部サダヲ。このあたりデートで観たら気まずいかも。そしてシングルマザーのハローワーク窓口職員(木村多江)の登場により一気にカタストロフィになだれ込む。

騙すといっても、どこまでが演技で、どこから本気なのか、おそらく騙している当人にも、操っている妻にも、はっきりと線引きできない部分があり、それがリアルで面白い反面、ちょっと息苦しい。なので、ハッピーエンドとはいえないまでも、さっぱりと気持ちの良いエンディングに救われました。

ときどき終電を逃してタクシーで帰宅するときにも感じますが、佃島の夜景は映画のなかでも本当にきれいです。

 

2012年8月17日金曜日

bar PORTO 前川朋子(vo)、 前原孝紀(g)

東京の最高気温がこの夏一番の36℃を記録した金曜日の夜。日暮里のbar PORTOまえかわとも子さんの歌を聴きに行きました。The Xangosが「火」、ソロの弾き語りが「風」だとしたら、この店で聴かせるデュオは「水」のイメージ。前原孝紀さんのリリカルで繊細なギターに乗せて、どこまでも丁寧に唄います。

前半は「出会いと別れ」をテーマに9曲。15分ほどの休憩を挟んで、後半はサマーソングスを8曲。アントニオ・カルロス・ジョビンミルトン・ナシメントなどのブラジリアン・ナンバーと日本語曲と半々で構成されています。

まえかわさんの声質は、メゾピアノで最低3種類、フォルテが2種類以上、その他に語りとボイスパーカッション的な効果音とを使い分けできる、高度な技巧を持つ歌い手です。しかもその技巧が、技巧を聴かせる目的に使われていません。唄うことがどれだけ好きか、ひとつひとつの曲に真剣に向き合って、表現を高めようとしているか、どれほど切実に共有したいことがあるか、彼女のライブパフォーマンスを観たすべての人に伝わるはずです。

僕はポルトガル語の歌詞の意味は理解できませんが、曲間の小さな解説と、歌い手であるまえかわさんの声、身ぶり、顔の表情、それらのテクスチュアから、その歌が伝えようとしている、歌詞の主人公のコンディションもしくはエモーションをまざまざと体感することができます。それってすごいことだと思いませんか?

言葉の通じない土地に行って、それでも何かを伝えなくてはならないとき、身ぶり手ぶり、声、表情を使ってなんとか意思疎通をしようとする。まるで言葉を覚える前の赤ん坊が全身を震わせて何かを伝達しようとしているみたいに。みなさんにもそんな経験があると思います。

そんな駄々っ子のように一所懸命なところと、会場の空気全体を優しく包み込むような大人の女性らしいところと。結果的に同時に体現してしまう。そして観客ひとりひとりに手渡される歌は高度な技巧に裏打ちされた作品。むしろそれは歌というよりも、虫の鳴き声や鳥のさえずりに近いのかもしれません。唄っている姿がとにかく楽しそうで、2時間半唄って、アンコールが済んでもまだ唄い足りない感じ。その姿に客席も幸せな気持ちになります。

※タイトルと本文の名前の表記が異なります。そのことについて以前ご本人におうかがいしたのですが、あまりこだわりはお持ちでないようですので、僕も適当に使い分けています。

2012年8月16日木曜日

Poemusica Vol.8

東京は立秋を過ぎても残暑の日々が続きます。8月第3木曜日、下北沢Workshop Lounge SEED SHIPで"Poemusica Vol.8"が開催されました。サブタイトルに「闇鍋ピアノ」と冠して、まったくタイプの異なる3人の歌姫を迎え真夏の夜をにぎやかに。

河内結衣さんは山口県出身の23歳。小柄でふんわりした雰囲気のアイドル的といってもいいヴィジュアルに反して、明確なタッチのピアノとハードボイルドなボーカルを聴かせます。即興のピアノソロ2曲に、ベースの大石彬さん、カホンの並木さきさんが加わったトリオ編成でボーカル曲みっつ。クラシック、ジャズ、コンテンポラリーと音楽的な引き出しを多く持つ、才能溢れる人。アンサンブルの精度を上げれば、もっとずっとずっと高いところまでいける。そんな可能性を感じさせる演奏でした。

画像は島崎智子さん。孤高の人。やさぐれとせつなさの波状攻撃。前夜、寝違えて曲がらないうなじに銀色に輝くせんねん灸を6個貼り付けてピアノに向かう姿は、メタリックなパーツを搭載したサイボーグのよう。粒立ちの良い軽やかなピアノに乗せて唄う歌詞はディスコミュニケーションをテーマにしながら、ヒューマンでコミカルでアナーキー。大阪弁のMCも面白く、客席の笑いを取っていましたが、僕は彼女の歌に、手の届かないところにあるものに対する切望と希求、そして絶望を感じずにはいられませんでした。

田野崎文さんは前回に引き続きPoemusicaは二度めの登場です。今回はスローナンバー中心にしっとりと聴かせます。すらりとしたスタイルと華やかな笑顔を持つ女の子なのですが、なぜかいつも静寂を纏っているような、独特のオーラを放っています。どんなに強く鍵盤を叩いても、エモーショナルに歌いあげても、その周りにだけいつも静かな風が吹いているみたいに。江の島の海で夕陽を眺めながら作ったという新曲もよかったです。

そしてLittle Woody。新作は彼の所属するバンドliquidの1stアルバムのPV。いつものキュートなだけじゃない、ワイルドでスタイリッシュでタイトな魅力を発見しました。MCは相変わらずのユルさでしたが(笑)、そこも好き。

僕は今回は「夏休み」をテーマに3篇の詩を自作のブレークビーツに乗せて朗読しました。まず「八月の光」。河内結衣さんが寄せては返す波のようにダイナミックなピアノソロを即興で添えてくれました。

そして現在来日中のザ・ビーチボーイズにリスペクトを込めて"God Only Knows"のカワグチタケシ訳。この詩には、島崎智子さんと田野崎文さんがメロディをつけて唄ってくださいました。それぞれ特徴の出た素敵な曲でしたが、それは会場にいたみんなとだけ共有したい秘密です。

最後に「都市計画/楽園」。ちょっと血を吸われたぐらいで、ちょっと痒いぐらいで蚊を殺すべきか、終演後何人かと議論に(笑)。

次回"Poemusica Vol.9"は9月20日(木)に開催。Shuhei Yasudaさん(Dancing Rabbit)、中村ピアノさんbackground of the musicさん、そしてLittle Woodyとカワグチタケシが「お月見」をテーマにお届けします。是非皆様お誘い合わせのうえお越しください!


 

2012年8月11日土曜日

おおかみこどもの雨と雪

ダニー・ボイルが監督したロンドン五輪の開会式は、成熟した大人のエンターテインメントでした。もしも日本で開催するようなことになってしまったら細田守監督がいいな。そんな薄曇りの土曜日。ユナイテッドシネマ豊洲で『おおかみこどもの雨と雪』を観ました。

夜はクリーニング店でバイトしながら、国分寺の安アパートから国立の大学に通う花(声:宮崎あおい)は、モグリの聴講生と知り合い恋に落ちる。ところが彼は狼男で、生まれてきたふたりのこどもはおおかみこどもだった。感情が昂ぶったり、ちょっとしたきっかけでオオカミに姿を変えてしまう子供たちを都市で育てるのがだんだん困難になり、北アルプスの麓の古民家に転居する。

細田監督の前々作『時をかける少女』、前作『サマー・ウオーズ』はいずれも数日間の出来事を凝縮して描いた物語ですが、『おおかみこどもの雨と雪』のなかでは12年の時間が流れます。けっして短くない時間の経過のなかで、登場人物は成長し、価値観も、関係も変わります。

幼いころはわがままで好奇心旺盛、社交的な姉の雪は学校という人間社会にコミットすることで自らの居場所を確立しようとする。無口でメンタルの弱い弟の雨は森に入って行くことで野生の叡知を得ようとする。その手前。アイデンティティを確立するまえの、居心地良さに包まれた不安定な時間。この居心地良さが逆にくすぐったくて、かさぶたを剥がすように自分で壊したくなってしまう感じを、僕も記憶しています。

それを見守る母親の花は、上の画像の劇場チラシにみるような強い母親像ではありません。いつも不安で、迷っていて。でもけっして笑顔を絶やさず、後悔をしません。山にはじめて雪が積もった朝。うれしくて斜面を転げるように駆け下りながらオオカミの姿に変わる姉弟。それを追いかける花は人間。その姿はぎこちなく、不格好で、だからこそ愛おしい。

この作品の背景の自然描写の美しさは、ジブリ映画を超えたといっても過言ではありません。花が狼男の正体を知らされる街を見下ろす丘で吐く白い息。雪が生まれた夜に静かに街に舞い降りる雪片。何度も象徴的に画面に降る強い雨。雨上がりの蜘蛛巣についた水滴。鍋から立つ湯気。繊細な作画は日本のアニメーション技術の到達点を示しているのではないでしょうか。

そして丁寧に描かれたディテール。主人公の本棚の背表紙に、高野文子棒がいっぽん』、『草野心平詩集』、『林と思想』(宮沢賢治の詩作品の題名)を見つけました。『時をかける少女』『サマー・ウオーズ』に続いて、ヒロインの入浴シーンもちゃんとあります。

 

2012年8月4日土曜日

ノラオンナ&見田諭、河合耕平

真夏の渋谷駅前の喧騒から10分。桜丘の坂道を上って下った静かな住宅街にあるCabotteはカウンター十数席の小さなワインバー。 ノラオンナさんの歌を聴きに行ってきました。前回5月銀ノラと同じくギタリストの見田諭さんとのデュオです。

まだざわついているカウンターに、小さく小さく爪弾かれるウクレレのイントロダクション。低く甘くすこしかすれた声で唄い出す「こくはく」。生成りのノースリーブワンピースに腰まで伸びた真っ直ぐな黒髪。見田さんのギターがベースラインをサポートしつつ、時折はっとするようなオブリガートを被せる。

わずか数秒で店内の空気を濃密に変えてしまう。ベースメント・ミュージック。地下室の音楽。真夏の海や太陽を唄っても、ノラさんの声には、真夜中に地下室から聴こえてくるような、密室の響きがあります。

そして、自然と背筋が伸びるような心地良い緊張感と穏やかで大きな波に揺られているような包容力。研ぎ澄まされた演奏に無駄のない吟味され尽された言葉。クオリティだけをどこまでも追求していったら、結果的にエンターテインメントになってしまっていたという清廉さ。それが彼女の音楽の魅力です。

少しおとなになりなさい」「パンをひとつ」「流れ星」といった初期の名曲。殊更今夜は「やさしいひと」が心に染みました。はじめて聴いた「今日は日曜」、アンコールで演奏されたワルツの新曲「タクト」も楽しかった。

共演した河合耕平さんもよかったです。ガットギターの弾き語りで、テンションを多用したコードと複雑な転調を持つ音楽を、しっかりしたピッキングとナチュラルな歌声でさらっと聴かせる。とてもプライベートな感触の音楽。たとえば、クラスで一番ギターの上手な男子が、自室のベッドに腰掛けて、ガールフレンドひとりに向けて演奏しているような。GPS愛を唄った「衛星の知らせ」など歌詞も面白かったです。

追加オーダーしたミュスカデもきりっと美味しく冷えて、ほんのりほろ酔い気分で明るい月を見上げながら、駅までの坂道を歩いて帰りました。

 

2012年7月29日日曜日

グスコーブドリの伝記

来月のフィクショネス文学の教室の課題図書は、宮沢賢治グスコーブドリの伝記」。便乗して僕が講師を務める詩の教室も宮沢賢治の晩年の詩作品『疾中』から紹介します。ということで夏休み。ユナイテッドシネマ豊洲杉井ギサブロー監督作品『グスコーブドリの伝記』を鑑賞しました。

主人公グスコーブドリはグスコーが姓でブドリが名。イーハトーブの森に住む木こりの息子。冷害の年に家族を失い、いくつか職を転じながら都市へ。最後は火山局の技師になり、身を挺してイーハトーブを冷害から救う。

文庫本でわずか50ページあまりの物語を90分の映像作品に仕立てているわけですが、原作から差し引かれたシーン、足されたシーンがあります。宮沢賢治の作品はどれも説明的な描写を省く傾向がありますが、脚本と映像で補完して、子供が観ても容易に理解できるようにしてあります。そのため、原作にはない台詞が出てきますが、さすが天沢退二郎監修だけあって、いかにも宮沢賢治作品の登場人物らしい言い回しになっています。

国語の授業のシーンで桑島法子さんが「雨ニモマケズ」を朗読したり、銀河ステーション(原作ではイーハトーブ駅)で子どもの幽霊たちがつぶやく声が『春と修羅』の「青森挽歌」だったり、カルボナード火山で最後の任務に就くブドリの台詞が『銀河鉄道の夜』からの引用だったり、ブドリの夢や白昼夢に現れる幽界のイメージが「グスコーブドリの伝記」の先駆形「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」を想わせたり、宮沢賢治ファンに対する配慮も充分です。

小学生のブドリの声を小栗旬(左利き)が演じているのが最初違和感がありましたが、物語は彼の10~27歳を描いていますから、それもまあありかな、と。ちなみに原作に何度か書かれている「地震」という単語は映画には出てきません。イーハトーブ市街や大学の建築、クーボー博士の飛行船などメカニカルデザインは原作のイメージとは違いますが、レトロフューチャーな格好良さがあります。

宮沢賢治、ますむらひろし、杉井ギサブローの組み合わせということで、どうしても1985年の『銀河鉄道の夜』と比較してしまいます。別役実の脚本も素晴らしかったですが、いちばんの違いは音楽だと思います。小松亮太のノスタルジックなバンドネオンも悪くないのですが、『銀河鉄道の夜』のサウンドトラック盤細野晴臣が提示してみせたフルスケールでメタリックなのに人間の体温を強く感じさせる音楽は、27年経ったいまでもまったく古びていません。
 

2012年7月22日日曜日

TOKYO POEKET Vol.16

涼しい曇りの日曜日。両国へ。江戸東京博物館で開催された"第16回TOKYOポエケット"に、プリシラ・レーベルとして出店してきました。

TOKYOポエケットはいわば「詩のコミケ」。ヤリタミサコさん川江一二三さんというふたりの詩人が主催して1999年12月第1回を開催。当初は年2回、現在は毎夏恒例の詩集、詩誌の即売・交流会です。出版社も同人もフラットに、というポリシーはブース面積にも反映しています。

プリシラ・レーベルは、詩人佐藤わこ、カワグチタケシが1998年1月に立ち上げました。ポエトリー・リーディングのカセット・テープ制作からスタートして、ライブイベントを主催したり。現在はインディーズ出版とCD制作を中心に活動しています。ポリシーは「ホチキス留め詩集のトップブランドを目指して」(今決めた、笑)。何十万も出費しなくても、インクジェットプリンタとホチキス、それにちょっとしたアイデアと丁寧な手仕事さえあれば、クオリティの高い書籍を制作できる。それがプリシラのレジスタンスなのです!

TOKYOポエケットには1999年の初回から出店しています。昨年は残念ながら日程が合わず見合わせましたが、一昨年の様子はこちらで紹介しました。

今回は、三角みづ紀さん松岡宮さんという、ポエケット会場でも一、二を争う人気詩人のブースに挟まれるというベストポジションを得て、目標にはわずかに届かなかったものの、当社比過去最高売上を達成しました。主催のおふたりの粋な計らいに感謝。

僕の詩集やCDだけでなく、井上久美さんの画文集「NEW YORK SKY」、石渡紀美詩集上下巻も多くのお客様に手に取っていただきました。お買い上げいただいたお客様、立ち読み、試聴、おしゃべりしてくれた皆さん、近隣ブースの詩人のみんなに、ありがとうございます、と言いたいです。

今回はひとりの店番で来客が途切れず、他のブースを覗く余裕がなくて、不義理も多々。そのあたりは次回の課題としたいと思います!

 

2012年7月19日木曜日

Poemusica Vol.7

午前中はよく晴れていましたが、午後から曇って急に気温が下がりました。ライブのときは結構な荷物なので、涼しいのは助かります。そんな七月第三木曜日。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPで"Poemusica Vol.7"が開催されました。

アカリノートさんはギター弾き語り。会うのはこの日が2度目です。井の頭公園で定期的にベンチライブを演っていて、この3日前の7月16日にも開催されることをTwitterで知り、同じく吉祥寺であったThe Xangosライブの前におじゃましました。よく晴れた夏の午後、木漏れ日の中にひろがる澄んだ歌声。気持ち良いひとときでした。その声がSEED SHIPのサウンドシステムを通すと、よりクリアに優しく響きます。動物に気持ちを投影した歌詞もロマンチック。

田野崎文さんはピアノ弾き語り。長身にインディゴブルーのワンピースが良く似合う。ショートカットのおでこをきりっと出して、裸足で歌います。和テイストを強く感じさせる北国の旋律。「その手でブルーのワンピース着せて/周りはあじさいでいっぱいにしてね」と自身の葬送を歌う「あじさい」など、良い意味で文学少女的な歌詞。実は2000メートル級にもがんがん登っちゃう山ガールなのですが、フィジカルな強さと文学性とをバランス良く持ち合わせた方なのだと思います。

アカリさんと文さんは同い年で、出身地が鹿児島と北海道。Little Woodyと僕は関東出身。そんな4人が今回はひとつのテーマを決めて作品を持ち寄りました。

先月Poemusica Vol.6を観に来てくださった文さんと終演後にそんな話になって、僕が持っていたファイルに自分で歌詞を翻訳したものがいくつか入っていたなかで、彼女が「これで」と決めたのが、The Bee-Geesの"Melody Fair"。映画『小さな恋のメロディ』の主題歌です。

ふたりのミュージシャンはこの歌詞を全く違うメロディに乗せてくれました。「人生は雨には似ていないよ/メリーゴーランドみたいなもの」と、高3文系男子が2年後輩の女子を爽やかに諭すみたいな(笑)アカリさん。「君は僕だけの女の子」と純愛仕立てのスローバラードにした文さん

Little Woodyは、この歌の少年性を純粋に抽出したような実写映像作品を作ってきてくれました。まぶしい日差し。踏切。田んぼのあぜ道。笹舟レース。ファンタオレンジ。ノスタルジックな色調が原曲に映えて、とても素敵でした。

僕も何かひと工夫と思い立って、前日にブレイク・ビーツを作りました。The Bee-Geesの原曲のアレンジは歌詞に合わせて、雨音をハンドクラップ、星座のまたたきをグロッケンシュピール(鉄琴)で表現しているのですが、そのハンドクラップ部分をループさせて。

同じテーマだからこそ、相違点と共通点が浮き彫りになる。作って演じている僕たちも楽しかったけれど、客席のみなさんにもその楽しさはお伝えできたのではないでしょうか。あとで聞いたらみんな前日か当日に作ったみたいで、まさに夏休みの宿題(笑)。でも、瞬発力っていうのは優れた表現者には欠かさざる素養なんだな、と。もちろん普段の積み上げあってのことと思いますが。

さて、次回Poemusica Vol.8は8月16日(木)にSEED SHIPにて開催。Little Woodyと僕。 河内結衣さん島崎智子さん、そしてVol.7につづいて田野崎文さんが出演します。平日だとなかなかね、という方でも、夏休みですので、この機会に是非。真夏の下北沢でお待ちしています!

2012年7月16日月曜日

The Xangos at ALVORADA

半月ぶりの更新。僕は元気です。東京の雨期はようやく明けたようですね。そんな海の日の夜。吉祥寺のランショネッチ(ポルトガル語で定食屋の意)ALVORADAへ。The Xangosのライブに行ってきました。

中央線沿いの雑居ビル。半地下のドアを開くと、海の家のようなプラスチックの椅子。天井にはサンパウロF.C.CRフラメンゴサントスF.C.のフラグ。ここは浜松かと見紛うばかり(笑)。5月にお会いしたときよりすっきり痩せて綺麗になったまえかわとも子さん(左利き)が豪快な笑顔で迎えてくれました。

オルタナ・ボッサとも形容されるThe Xangos。ノスタルジックでメローなブラジル音楽をベースにしながら、そんなことにはおかまいなしに逸脱しまくる中西文彦さんのギターは、ブルースに軸足を置いて革新的なロックンロールを創造していった初期The Rolling StonesにおけるBrian Jonesを思わせます。

ボーカルのまえかわとも子さんが、広い声域と5~6種類の声質を使い分け、自由奔放にメロディを紡いでいくさまは、生命そのもの。すこし天然の入ったチャーミングなMCと唄い出したときの神々しいまでのオーラのギャップ。

そして、七弦ギターとバンドリンでタイトかつ繊細かつパッショネートに、脇をがっちり固める尾花毅さん。この理想的なアンサンブルに、1970年代初期に関東学院大学セミナーハウスから発祥した湘南サブカルチャーのひとつの結実を見た思いです。枠にはまらない、なんてよく言いますが、枠にはまったアートがその枠をはみ出さずにはいられないときの爆発的な熱量にかなうものはないのかもしれない。なんて考えながら。

それでも3人の奏でるリズムは終始心地良く、それに身を委ね、眼の前でふつうに起こる化学反応にハッとしたり、甘いメロディにうっとりしたり。2曲のアンコールを含め全15曲を堪能しました。

フェイジョアーダ、フランゴ・コン・キアーボ、キビ、コシーニャと、料理はどれも美味しく、ビールがすすむ熱帯夜初日でした。

  

2012年6月30日土曜日

きっとここが帰る場所

今年の東京は空梅雨ですか? 蒸し暑さだけはすこしだけ感じるようになりました。そんな雨期の土曜日、ヒューマントラストシネマ有楽町で、パオロ・ソレンティーノ監督作品『きっとここが帰る場所』を観ました。

ユース・カルチャー、ポップ・カルチャーのスターの寿命は短い。U2松田聖子みたいなモンスターは例外として。引退したスポーツ選手が解説者や焼き鳥屋になるみたいに、どうやって生活しているのかな、という疑問(興味?)は以前からなんとなく抱いていました。

アイルランドのダブリンで悠々自適の印税生活を送る元ロックスター、シャイアンをショーン・ペンが演じていますが、役柄への没入が半端無い。ビジュアル・イメージは、ザ・キュアロバート・スミスそのもの(実物のザ・キュアは1978年の結成以来、一度も解散せず現在もバンド活動中)。

予告編だと、父親の死を契機に始まる旅と成長の物語、って感じですが。実はそれは作品をメジャー配給に乗せるための方便に過ぎず。実態は、変てこな設定とユーモラスでアレゴリー満載の脚本、斬新なカメラワークと音響処理で魅せるコンテンポラリー・アート。どちらかといえば、フェデリコ・フェリーニオタール・イオセリアーニ監督作品の感触に近い。

ロードムービーの体裁を整えるためか、後半はピックアップ・トラックでアメリカ各地を転々としますが、前半1時間弱はダブリンが舞台です。ショッピングモールに入ったらたまたまインストアライブをやっていて、シャイアンの姿を見た駆け出しバンドのメンバーに緊張が走るシーンや、地元の悪ガキに無理やり肩を組まれ写メを撮られるシーンは笑えます。

この映画の原題は"This must be the place"。
Talking Headsの1982年の名曲から採られています。オリジナルデイビッド・バーンのソロ(劇中ライブ)、シャイアンのギター伴奏と小太りの子役の歌、エンドロールのグロリア(女性ボーカル)など、複数バージョンを聴くことができるのも楽しい。とても良い曲です。


2012年6月21日木曜日

Pemusica Vol.6

はやいもので、このシリーズが始まって半年が経ちました。季節も、真冬から春、初夏へと巡り、この日は夏至。北半球では一年で一番短い夜、下北沢Workshop Lounge SEED SHIPで"Poemusica Vol.6"が開催されました。

いっくんこと伊藤masa辰哉さんはピアノ弾き語り。事前に聴いていたCD"Nature Songs"の印象は、Harold Buddを思わせるニューエイジ系のソフトなピアノ曲と、優しい声質を活かして電子鍵盤楽器をフィーチャーしたボーカル曲が半々。実際のライブはそんなカテゴライズから逸脱しまくった、自由で楽しい音楽でした。ラジオ体操の変奏曲が飛び出したかと思えば、客席から音符をふたつもらってメランコリックな即興曲。中島みゆき「時代」のカバー、自作のララバイ。と、自由自在。普段はボーカリストのサポートとして演奏する機会が多いそうですが、センターを務めたときの瞬発力は抜群です。

そして、kainatsuさん。センターに立つために生まれてきたような存在感があります。いっくんとは対照的にシャープな音色のピアノと、ざっくりしたギターに乗せて、きらきらとまっすぐに、明確な発声で歌います。小顔に澄んだ大きな瞳、長いまつげ。ショートカットにピンクのメッシュ。小柄なスタイルをオーバーサイズのワンピースで包み、足元はドクターマーチン。どこをとってもキュートで、こんな女の子がクラスにいたら絶対片思いしてた(笑)。それだけでなく、トラウマにもしっかり向き合い、相対化して、作品に磨き上げることのできる才能の持ち主です。新曲「フェイスブックとチューインガム」「グレーゾーン」は特に素晴らしかった。曲作りは歌詞先行とおっしゃっていましたが、その華奢な肩に背負ってきたものを想い、歌声を聴いていると、きゅんとせずにはいられませんでした。

Little Woody のアニメーションは今回豪華4本立て。kainatsuさんには「ジブリ映画からそのまま出てきたみたいな人」と言われていましたが、ほんとそう思います。ヴィジュアルだけでなく内面までも。毎月会うごとに、ちょっとずつ親近感が増していくなあ。実の兄妹よりも実際多く会っているわけですが(笑)

僕はこの日はふたつのステージを。前半は、6月6日に91歳で亡くなったアメリカの小説家レイ・ブラッドベリの短編「万華鏡」からの抜粋と、自作の「舗道」「夕陽」「答え」という3つのソネットを朗読しました。「答え」は、ブラッドベリの「オリエント急行、北へ」から一行引用しています。後半は夏至にちなんで、プチ・キャンドルナイトに。会場の照明と空調を5分間だけ全て落としてもらい、ろうそくの灯りで、「ガーデニアCo.」という、ある夏至の一日を描いたトリプル・ソネットを読みました。

僕の朗読については、kainatuさんと来月Poemusicaで共演させていただく田野崎文さんが、それぞれのブログで素敵に紹介してくださっています。それ以上に僕から付け加えることはありません。どちらもちょっと身に余るくらい。ありがとうございます!

*kainatsu official blog "AI girl! YUME girl!"
*田野崎文 official blog "気のむくままに…"

来月も第三木曜日、7月19日に同じくSEED SHIPで。Poemusica Vol.7が開催されます。おなじみLittle Woody と僕に加えて、田野崎文さんアカリノートさんの出演が決まりました。田野崎さんのご提案で、コラボ企画も実現しそう。テーマは「小さな恋のメロディ」。みなさまのお越しをお待ちしています!


2012年6月9日土曜日

ミッドナイト・イン・パリ

大傑作。雨の土曜日。梅雨入りした東京の最高気温は20℃。有楽町マリオン9F丸の内ピカデリーで、ウディ・アレン監督作品『ミッドナイト・イン・パリ』を観ました。

1980年代までの作品はそれなりに追いかけていたのですが、ウディ・アレンの映画を観るのはショーン・ペンが主演した 『ギター弾きの恋』(2001年日本公開)以来です。

オーウェン・ウィルソン(左利き)演じるハリウッドの脚本家ギル・ペンダーが2010年に婚約者と訪れたパリで、1920年代にタイムスリップします。タイムマシンは古いルノーのタクシー。最初の夜はゼルダとスコット・フィッツジェラルド夫妻にジャン・コクトーのパーティへ連れて行かれます。そこでピアノ弾き語りをしているのがコール・ポーター。パーティを抜け出して行ったカフェでひとりワインを飲んでいる無精髭のアーネスト・ヘミングウェイ。全編そんな感じのお話です。

ガートルード・スタインパブロ・ピカソアンリ・マティスサルバドール・ダリマン・レイルイス・ブニュエルT.S.エリオット。更に1890年代へ馬車でタイムスリップした先には、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックエドガー・ドガポール・ゴーギャンも登場し、このへんまで来ると俳優が役名を名乗るだけで映画館内爆笑。よくモノマネで「こんばんは、森進一です」みたいのあるじゃないですか。あれに近い。

次々に画面に登場する有名人たちのキャラ設定がベタでわかりやすい。フィッツジェラルドは洒脱で気弱、ヘミングウェイは常に暑苦しく、ダリはサイの話しかしない(笑)。

そのヘミングウェイが「移動祝祭日」と呼んだ1920年代のパリ。第一次世界大戦と世界大恐慌に挟まれたつかの間の輝き。もちろん、エンドロールに名前が載る一流有名人だけではなく、芽の出なかった芸術家もいれば、労働者もいたはず。でも、あえてそこには目を向けず、シンプルな筋立てに徹した演出がお見事。ザッツ・エンターテインメント。映画館の暗闇でスクリーンに向き合う時間ぐらいは、現実を忘れたっていいじゃない?

2010年も、1920年も、1890年も、パリの街並みはいつも美しい。ヘミングウェイが通ったカフェはコインランドリーになってしまったけれど、それ以外で変わったのは、人々の服装と自動車ぐらい。あと、ウディ・アレンの映画はいつも上映時間がちょっと短めで、この映画も約90分です。コメディは少々コンパクトで、もうちょっと観たいなっていうぐらいがちょうどいいな、と思いました。