2017年11月4日土曜日

ポエトリースラムジャパン2017秋 全国大会

紅葉の始まった晴海通りを西へ。晴海橋と朝潮大橋を渡って。中央区立月島社会教育会館にて開催されたポエトリースラムジャパン2017秋 全国大会に行きました。

全国で5回開催され計108名がエントリーした予選を勝ち抜いた12人が出場する全国大会。三木悠莉さんが優勝し、来年5月にパリで開かれるグランドスラム日本代表の座を手にしました。おめでとうございます。

散文的でウィットのある作風の選手が点数を集めるなか、共感やストーリーテリングよりもインディヴィジュアルなコンディションを表現することに専心し、そのためにならフォーレターワーズもためらわずに使う、若干投げやりなフロウと深い包容力を併せ持つ三木さんのパフォーマンスが抜群に冴えていました。

この大会では、観客から無作為に選ばれた5人が10点満点でジャッジし、最高点と最低点を除く中央3人の点数の合計が選手の持ち点になります。突出した好き嫌いを排除しある程度平均化した評価で勝敗が決まるルールですが、それを凌駕するクオリティと切実さが地区予選、全国大会を通じて三木さんの声と言葉には存在した。

準決勝を僅差で勝ち抜け、ファイナリスト4人に残った石渡紀美さんは黒のニットワンピースに真っ赤なスニーカー(画像)、世界のざわつきを鎮めるような落ち着いた声つきさんのすっと心の隙間に忍び込むような美声も印象に残りました。

広い舞台に一人で立つ選手たちを見ながら考えていました。朗読がアートフォームもしくは表現ジャンルとして成熟するためにはプロフェッショナルなアティテュードを持つクリティークが必要なのではないか。作品、朗読技術、声、佇まい。複合的な要素に、ひとつの正解を求めるのではなく、正解などないと断じるのでもなく、複数の正解があって、各々の価値を愛と情熱を持ってロジカルに論じられるような。

太平洋戦争中の大政翼賛的な戦争賛美詩の朗誦に対する反省から肉声を失った日本戦後詩は音韻律を否定するというかたちで世界でも特異な発展をしてきました。失われた声を再び取り戻すには「個」であることを、「個」であり続けることを決して手離してはならない、と僕は考えます。その意味でも今大会で三木悠莉さんが選手権を取ったことが僕にとってはひとつの希望です。


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