2017年9月2日土曜日

ポエトリースラムジャパン2017秋 東京大会C

午前中の雨が上がった明るい土曜日の午後。西新宿芸能花伝舎で開催されたポエトリースラムジャパン2017秋 東京大会Cを観戦しました。毎年5月にパリで開かれるポエトリースラムのワールドカップ(フランスなのでクープデュモンド)の日本代表決定戦の地区予選です。

24名の選手の中から優勝した大島健夫さん、準優勝道山れいんさん、会場賞三木悠莉さんの3人が素晴らしいパフォーマンスで全国大会に駒を進めました。おめでとうございます。

東京大会Bではプリシラレーベルから詩集を出版している石渡紀美さんが優勝しました。今回は同じくプリシラメイツの小夜さん(画像)がエントリーしているということで、3年前に始まったこの大会を初めて観戦するために、廃校の音楽室をリノベーションした会場に向かいました。

審査員は客席から無作為に選ばれた5人が対戦毎に入れ替わります。反権威主義が徹底されたスーパーフラットなルールですから、選手と審査員の相性によって、特に初戦は採点が左右される。今日の傾向としては、家族や郷愁など身近なテーマ、シンプルなレトリックの作品とフラットで明瞭な発声のパフォーマンスが得点を集めていたように思います。

シンタックス/ロジック的にはやや難解で皮膚感覚にぐいぐい訴えてくるような三木悠莉さんの作品はそのなかでも異彩を放っており、僕は最も惹かれました。TASKE氏は残念ながら初戦敗退でしたが彼が本質的に持つ異物感が今回はとても良い方向に出ていました。勝負が賭かることで動く選手たちの一所懸命な表情が皆違って美しかった。

会場スタッフもよくオーガナイズされており、選手と観客の心情に寄り添う猫道くんの安定感のある司会進行はプロフェッショナルなクオリティで、今回一番の感動。

主催者の村田活彦氏とは長い付き合いで、毎年1回『同行二人』という朗読会を続けています。彼がこのスラムイベントを始めたいと言い出した超初期の頃、いまやカリスマ書店員となった花本武くんと3人で豊洲の中華料理店で大層呑んだ4年前の夜を思い出しました。当初はいろいろな批判や問題もあったと聞きますが、多くの協力者を得て気持ちの良いゲームに育ててきたんだなあ、という感慨がありました。

声や言葉というものは、単一的な序列をすり抜けて個人を屹立させ、時には連帯させるツールになるべきだと僕は考えます。日本一の詩人を決めるとかではなく、声と言葉の可能性を示す諸相のひとつとして、これからも続いていけばいいし、このやり方に納得いかない人は自分なりのスラムなりコンペティションなりを起こして、結果的にいろんな尺度や価値感が併存していけばいいんじゃないかな、と僕は思います。


 

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