2017年3月25日土曜日

オルセーのナビ派展

よく晴れていますが風が冷たい。三寒四温でいうと三寒のほう。丸の内三菱一号館美術館で開催中の『オルセーのナビ派展』に行きました。

「絵画が、軍馬や裸婦や何らかの逸話である前に、本質的に一定の秩序の下に集められた色彩で覆われた平坦な表面であることを思い起こすべきだ」モーリス・ドニ新伝統主義の定義』(1980)

村野四郎ノイエ・ザッハリヒカイトにも通じるナビ派の即物主義的なアティテュードは、僕が大人になり、反抗的な十代の自己愛と自己嫌悪を超えて、詩作を再開した時期に大変影響を受けたものです。既成概念を一旦脇に置いて、対象物を見る、聞く、触る。そのときに自分の内外に起きたことを起きた順番に書き記す。自身の感覚に対する疑念も等価に扱う。

ドニ、ピエール・ボナールポール・セリュジエ。1870年前後に生まれた彼らのひとつ上の世代の象徴主義、印象派、後期印象派に対するリスペクトと強い反発。二十歳そこそこの画学生たちの青臭く清潔な野心と気概が画布から伝わってきます。

自然や人物には元来備わっていない輪郭線を描き、平坦な色彩で塗り分ける。現実を写しとるのではなく、絵画ならではの価値を模索していったのは、当時の最新テクノロジーである写真の登場も大きかったのではないかと思います。グループとしてはわずか9年程の活動期間ですが、一方では第二次世界大戦後米国の抽象表現主義に、他方では現代のアニメーション表現へ、両極端な継承のされ方をしているのも興味深い。

従来はゴーギャン展のゲスト的に扱われることが多かった彼らの作品をナビ派前後の時期も併せて一堂に観賞できます。のちのエドワード・ホッパーを思わせるフェリックス・ヴァロットンの都市の倦怠、エドゥアール・ヴュイヤールの「ベッドにて」、そしてなにより1890年代のドニの作品がどれも、コンセプト的にも技術的にも素晴らしかったです。


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