2013年5月10日金曜日

人生見事にギャンブルだね、男はみんなシャボン玉

大阪は午後から雨でした。新しくなった大阪駅から線路をくぐる地下道を抜けて梅田シャングリラへ。金佑龍 (ex.cutman-booche)の1stソロアルバム『Live in Living』のレコ発ライブ「人生見事にギャンブルだね、男はみんなシャボン玉」に行ってきました。

すさまじいライブでした。「文学はダメ人間を輝かせる装置」とは、小説家藤谷治氏の弁ですが、音楽もまさにそうだなあ、と。いや、金佑龍には明らかに才能があります。ブルースやカントリーを基調にしながらあくまでもキャッチーなソングライティング、誠実で胸に迫る歌詞、緻密で正確なギタープレイ、ハスキーで耳に残る声、どこをとってもハイクオリティ。なのにどこか自信なさげな佇まいで、発言もどちらかといえば後ろ向き。理想とプライドが高いのに、頭がいいから、現実とのギャップが客観的に見えてしまうのでしょう。

そんな彼の凱旋を待ちわびていた満員の聴衆の期待感が会場の気温を瞬時に上昇させ、彼とバンドもそれに応えた。幸福で濃密な、魂のコール&レスポンス。会場に詰めかけた多くの人たちが自分のダメさはダメなりに受け入れていこうという気持ちになった夜でした。ステージで演奏する5人が本当に格好良かった。

新譜に収録されている「或る世界で」のサビの歌詞。「光を浴びている」と唄った次の行で「闇も浴びている」と言わずにはいられない、そのスタンスは心底信頼に値します。フィッシュマンズへの愛に溢れた「ナイトクルージング」のカバーも最高でした。

この日のバンドは「東横方面」。gnkosai脇山広介のツインドラム(!)、ウッドベースLittle Woody、ペダルスチール宮下広輔の4名編成。愛すべきダメ人間たちの饗宴(笑)。才能溢れる人たちが集まり、同じ方を向いて本気を出したときの手のつけられなさといったら! そのビッグビートは単なるサポートの枠を軽々と越えて、時にはゆるゆる、時にはガチで、放蕩息子の帰還を心から祝福し、支えていました。

金佑龍のMCの通り「今夜ここにいたことを後で自慢できる」、いやいますぐ誰彼かまわず自慢したい、そんなキラキラした空気が終演後、いつまでもごった返す会場ロビーに充満していました。


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