2012年10月27日土曜日

風景の少年少女たち vol.7 あのかぜのゆくえ

渋谷センター街がハロウィンの狂騒に包まれた10月最後の土曜日。Poemusica Vol.7で共演したご縁で、アカリノートさんが主催するライブイヴェントに招いていただきました。「風」をテーマにしたこのライブは、アカリさん含む4組のミュージシャンに、ねもとなおこさんの絵画作品と僕の朗読で空間と時間を構成するという趣旨です。

各ミュージシャンの演奏の前に、一篇の詩を添えるという、このお話をいただいたときに、僕の役割は登場人物たちにすこしずつ関わりながら、時間の流れを整え、物語に統一感を与える、たとえていえば、シェイクスピアの『夏の夜の夢』の妖精パックのようなものだと認識しました。そのため事前に共演者の情報を動画等で得ましたが、生演奏はいずれもそれを軽く超える素晴らしいものでした。

mueさん。赤いタータンチェックとデニムの切り替えワンピース姿で登場。森に暮らす小動物のような愛くるしいビジュアルで、大きなガットギターを抱え、タイトなリズムで複雑なテンションを多用したプレイを聴かせます。それがとても自然で、ちっともすごそうに見えないのは、冬の日だまりみたいにほんわかと心地良い歌声のせいでしょうか。The Beatles "Here Comes The Sun"のカバーもお見事でした。

阪本正義さんは、アカリさんが紹介していた通り、大陸を吹くおおらかな風のような音楽を奏でます。年輪を感じさせる枯れた深みのある歌声、ブルージィでロマンチックな歌詞、正確で抑揚のあるスリーフィンガー。ベテランらしい余裕のあるステージングで、ゆったりとした空気を創ります。なによりも唄っている姿が楽しそうで、歌が大好き、ということがひたひたと伝わってきます。

鴇田望トリオは、ピアノ鴇田望さん、ベース日向克典さん、ドラムス米沢ジョンさんの三人組。日向さんは4ビートの曲ではウッドベースを16ビートの曲ではエレキベースを弾きます。ジャズ/フュージョンのオリジナル曲はすべて歌詞を持たないインストゥルメンタルですが、お互いの演奏で饒舌に会話しているような印象を持ちました。ノスタルジーに走らない、21世紀のジャズ。ジョン!

アカリノートさん。いつも通りのロマンチックでセンチメンタルな音楽をすこし濁りのあるスチール弦と良く伸びる声で唄うのですが、それらの各エレメントがいつもより多めで、このイヴェントに対する力の入りようを表していたように感じました。鴇田望さんのピアノもアカリさんの声に良く合っていました。

僕が朗読したのは、オープニング、そしてmueさんの呼び出しに「風の生まれる場所」、阪本さんの前に「風の通り道」、鴇田望トリオさんに「新しい感情」、アカリさんには「風のたどりつく先」を贈りました。「風」がタイトルに入っている3篇は今回のライブのために書き下ろした新作。「新しい感情」も冒頭に風のシーンが入ります。

それらのパフォーマンスを控えめに包み込むように見守るねもとなおこさん5枚の絵画作品。いろいろな模様の水玉を描いているようにみえますが、実はエアパッキン(プチプチ)に絵具をつけて紙にスタンプしたもの。そこに抽象化された風景や夜空が描き込まれています。事前に読んでもらっていた「風の生まれる場所」をイメージして制作してくださいました。規則的に並びながらも、不規則に皺のよったプチプチのひとつひとつに内包された風。それらの痕跡。吊り下げられたペーパーフラワーが時折揺れて、地下のライブハウスにも風が吹いていることを僕たちに知らせてくれます。

そして最後に、僕の詩にアカリさんが曲をつけて、客席から2声のコーラスも加わり、みんなで演奏した「風の生まれる場所」。

いろいろな事象が調和した幸福な夜でした。知り合って間もない僕に今回の大役を担わせてくれたアカリノートさんはじめ共演者のみなさん、お客様、Wasted Timeの美人スタッフのおふたり、どうもありがとうございました!

そんなこんなで、10月も終わり。僕にしては異例の4本のライブを無事にやり遂げることができました。協力してくださった皆様、どこかで気にかけてくださった皆様に感謝したいです。でも、次のがもうすぐそこなんですけどねー。

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Poemusica Vol.11 〜オリジン〜

日時 :2012年11月16日(金)open18:30 start19:00
会場 :Workshop Lounge SEED SHIP
     世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
     03-6805-2805 
料金 :予約2,300円、当日2,800円(ドリンク代別)
出演 :蜂谷真紀 *音楽
     Little Woody Band *音楽
     Rio Nakano *Live Painting
     尾上文 *ポエトリー
     カワグチタケシ *ポエトリー 

※11月のPoemusicaは金曜日。伝説のポエトリー・リーダー尾上文
 (ex.ボーイ・ミーツ・ガール)が登場します!

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