2011年8月17日水曜日

ツリー・オブ・ライフ

残暑と呼ぶには真夏過ぎます。早起きしてユナイテッドシネマ豊洲へ。2011年度カンヌ映画祭パルム・ドール受賞作、テレンス・マリック監督『ツリー・オブ・ライフ』を鑑賞しました。

予告編を見ただけだと、父子の葛藤と家族を描いた心温まるお話なのかと思いますが、それは半分。残りはなんというか、太陽系の誕生から生命の進化と死をすべて網羅し、圧倒的な映像美で表現しようとした意欲作です。

信心深く厳格で威圧的な父(ブラッド・ピット)、優しく天真爛漫で少女のような母(ジェシカ・チャステイン)、三人兄弟の長男ジャック(ハンター・マクラケン)。 1950年代の米国西部中流家庭の輝かしくも鬱屈した日々を大人になったジャック(ショーン・ペン)が回想するというのが前者の骨格。

超新星爆発から小惑星衝突、火山の噴火、水の生成、螺旋状のDNA、ミトコンドリアの誕生、海藻、魚類、爬虫類(恐竜)の発生と憐憫の感情の獲得。それぞれの位相で現れるぼんやりとした光に象徴される神(創造主)。これが後者。

台詞のほとんどがモノローグで、それも創造主への問いかけ(旧約聖書ヨブ記を下敷きにしている)。

カンヌでの上映後、スタンディングオベーションとブーイングが同時に起きたというのも納得です。

家族の場面は、どのカットをとっても一枚の泰西名画のよう。宇宙創造の場面は、ハッブル宇宙望遠鏡から送られてくる画像データを想わせます。映像はいずれも、果てしなく残酷なまでに美しく、これは映画館のスクリーンでないと味わえないものだと思います。※恐竜のCGだけはちょっと安いです。

母親役のジェシカ・チャステインが終始可憐で、レーヨンのワンピースを中心としたノスタルジックな衣装も素敵。暴力的な父親役との対比を見るにつけ、マザコンってのはこうやって日々の積み重ねで形成されていくものなんだなあ、ということが本当によくわかり、世のマザコンのみなさんに対する理解が少し深まりました。

テレンス・マリック監督作品『天国の日々』(1978)は好きな映画。学生のころ何度もビデオを借りて観ました。こちらは諸手を挙げてお勧めできます。

 

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