2011年6月4日土曜日

マイ・バック・ページ

よく晴れた6月らしくない土曜日の午後、ひさしぶりに映画館へ。ユナイテッドシネマ豊洲にて、『マイ・バック・ページ』を鑑賞しました。 川本三郎の自伝的小説を、山下敦弘監督が映画化したこの作品。妻夫木聡松山ケンイチのダブル主演という話題性もあって、単館ではなく、シネコンでも公開となった模様。

優柔不断な泣き虫を演じたら当代一の妻夫木聡がナイーブで感傷的な駆け出しジャーナリスト、いまやコミック原作映画には欠かせなくなった松山ケンイチが口ばかり達者で思想も行動力も無いなんちゃって革命家。そのふたりの友情と裏切りを、学生運動全盛期の1969~72年、東京を舞台に描いています。

同じ山下敦弘監督の最近作、『リンダリンダリンダ』『天然コケッコー』は、よくできた青春アイドル映画で、どちらも好きな作品です。前者だとペ・ドゥナ、後者では夏帆(左利き)。今回は忽那汐里の魅力を最大限に引き出していると思います。

妻夫木聡演じる雑誌記者沢田が、その雑誌の表紙モデル倉田眞子役の忽那汐里を誘って、ジャック・ニコルソンの『ファイブ・イージー・ピーセス』を観に行くシーン。前夜酒場で同僚と喧嘩して顔じゅう痣だらけの沢田は、先に席についた眞子との間をひとつ空けて座り、空席に鞄を置きます。その鞄をどかして、沢田の隣に席を詰める眞子。映画のあと喫茶店で言う「男の人の泣く姿が好き」という台詞。日曜日の無人のオフィスで再会したときの事件に対するコメント。いわゆる男子が思い描く理想の女子像とはちょっとずれているかもしれませんが、こういうことされたら、言われたら、ぐっときちゃうだろうな、と。

勤め人時代の妻夫木聡のネイビースーツ姿の居住い正しさ。フリーランスになってからのスイングトップとチノパン姿の貧相さ。この対象的な衣装も印象に残りました。

それから、ワンシーンだけ登場する東大全共闘議長唐谷義朗役長塚圭史の格好良さといったらないです。

それにしてもこの時代の男たちの、よく汗をかき、よく煙草を吸うこと。制汗デオドラントどころか冷房すらなかった時代の男だらけの真夏のオフィスはさぞかし汗臭かったことでしょう。そして、1970年に煙草を吸って彼らがつぶしていた手持ち無沙汰な時間を、2011年の僕たちは何に置き換えているのか。携帯電話かなあ。


 

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