2017年11月18日土曜日

TQJ Poetry Reading Live

予報ほどひどい雨にはなりませんでした。文京区白山のJAZZ喫茶映画館で開催された TQJ Poetry Reading Live にご来場のお客様、映画館のマスターと絹子さん、共演者のおふたり、皆様どうもありがとうございました。

晩秋の短い日が暮れかかる3時半に始まり、5時少し前に終演する頃にはあたりは冷たく湿った宵闇に包まれていました。われわれ3人のポエトリーリーディングショーをお楽しみいただけたのなら幸いです。

究極Q太郎氏に初めて出会ったのは2000年6月、西荻窪にあったブックカフェHeartland。東京都の半透明ゴミ袋にアコースティックギターを無造作に突っ込んで、足元は健康サンダル、という姿に衝撃を受けました。今日のQさんはコンビニレジ袋に自分で製本した詩集を目一杯詰め、それを左手に提げたまま朗読するというストロングスタイル(画像)。

10年のブランクで「段取りを忘れて」と言っていましたが、いまだかつて段取り通りのパフォーマンスをしたところを見たことがない。愛すべきキャラクター。生来の品の良さと知性、イデオロギーと抒情。高い技術を持ちながら自ら進んで壊しにいく。ああ、この感じ!!

ジュテーム北村氏の長尺のリーディングを聴くのはひさしぶりです。西脇順三郎から三角みづ紀さんまで、大正~昭和~平成の日本現代詩クロニクルに、究極Q太郎、カワグチタケシ、ジュテーム北村自作詩を織り込んだコンセプチュアルなパフォーマンスアート。緩急をつけたドライヴ感とグルーヴで一気呵成に濃密な時間を構築し、空間を支配する。

僕のセットリストは以下8編です。

・幾千もの日の記憶/究極Q太郎
無題(なぜ殺してはいけないか)/ジュテーム北村
都市計画/楽園
観覧車
水玉
花柄
fall into winter
・第一のフーガ(二声による)/ウンベルト・サバ須賀敦子訳)

サバのフーガは3人で輪読しました。また「水玉」と「fall into winter」はジュテさんにもカバーしてもらったので、2人のリズムや解釈の違いが際立って面白かったのではないでしょうか。

加齢とともに意図せず出てくる大御所感を如何にして消すか、というのが昨今の課題でもあったのですが(笑)、ノスタルジーやセンチメントに流れず、アクチュアリティを持ち、且つ質の高いエンターテインメントを提供することができたのではないかと思います。


 

2017年11月11日土曜日

ネルーダ 大いなる愛の逃亡者

煉瓦造りの建築に紅葉が映える。恵比寿ガーデンシネマパブロ・ラライン監督作品『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』を観賞しました。

1971年にノーベル文学賞を受賞した南米チリの国民的詩人パブロ・ネルーダ。彼をモデルにした映画といえば1994年公開マイケル・ラドフォード監督の名作『イル・ポスティーノ』ですが、伊ナポリ亡命中を描いた同作の前日潭ともいえる内容です。

1946年、チリ人民戦線のガブリエル・ビデラ共産党の支持を得て大統領選に勝利した。が一転、米国の強い圧力に屈して翌年共産党を非合法化。これを告発した共産党員ネルーダ(ルイス・ニェッコ)は上院議員資格を剥奪され、指名手配される。

ネルーダはアンダーグラウンドな支援者たちのサポートを受け、妻デリア(メルセデス・モラーン)とともに国外脱出を企てる。それを追うイケメンのキャリア警視ペルショノー(ガエル・ガルシア・ベルナル)。彼らの珍道中を詩的に抒情的に美しく描いています。

そして逃亡中とはいえネルーダの行動が奔放過ぎる。行く先々の街の酒場に出入りし、あるときは全裸の美女を何人もはべらせ自らも裸でシャンパンを空け、あるときはトーチソングを熱唱するトランスジェンダーの歌姫にせがまれて詩を朗読し熱いキスを受ける。娼館の年増女に化けたり、写真館の額縁に収まったりして追手をまく。そして先住民マプチェ族の襲来に怯えながら雪のアンデス山脈を越える。

「左翼エリートは乱痴気騒ぎが大好きだ」「共産党員は労働したがらない」。体制側の大農園主に見つかりお終いかと思いきや多額の税金を徴収する大統領への恨しみからネルーダを逃がしてくれたり。思想と感情に矛盾を抱えたまま流れ流されていく男たちに比べ、「私は真実で永遠なの」と言う妻デリアの確信的で堂々とした態度。

ネルーダの作風は、エロティックな恋愛詩と大地に根ざして民衆を鼓舞するポリティカルな詩が両輪ですが、どちらもパッショネイトであるという共通点において違和感がありません。

それらネルーダ作品の朗誦を随所に挟んだ台詞回しや逃亡劇とは思えないゆったりとした演出も詩的ですが、褪色した古いフィルム写真のようなローコントラストにホワイトアウトさせた画面処理も大変詩的で美しいです。

 

2017年11月4日土曜日

ポエトリースラムジャパン2017秋 全国大会

紅葉の始まった晴海通りを西へ。晴海橋と朝潮大橋を渡って。中央区立月島社会教育会館にて開催されたポエトリースラムジャパン2017秋 全国大会に行きました。

全国で5回開催され計108名がエントリーした予選を勝ち抜いた12人が出場する全国大会。三木悠莉さんが優勝し、来年5月にパリで開かれるグランドスラム日本代表の座を手にしました。おめでとうございます。

散文的でウィットのある作風の選手が点数を集めるなか、共感やストーリーテリングよりもインディヴィジュアルなコンディションを表現することに専心し、そのためにならフォーレターワーズもためらわずに使う、若干投げやりなフロウと深い包容力を併せ持つ三木さんのパフォーマンスが抜群に冴えていました。

この大会では、観客から無作為に選ばれた5人が10点満点でジャッジし、最高点と最低点を除く中央3人の点数の合計が選手の持ち点になります。突出した好き嫌いを排除しある程度平均化した評価で勝敗が決まるルールですが、それを凌駕するクオリティと切実さが地区予選、全国大会を通じて三木さんの声と言葉には存在した。

準決勝を僅差で勝ち抜け、ファイナリスト4人に残った石渡紀美さんは黒のニットワンピースに真っ赤なスニーカー(画像)、世界のざわつきを鎮めるような落ち着いた声つきさんのすっと心の隙間に忍び込むような美声も印象に残りました。

広い舞台に一人で立つ選手たちを見ながら考えていました。朗読がアートフォームもしくは表現ジャンルとして成熟するためにはプロフェッショナルなアティテュードを持つクリティークが必要なのではないか。作品、朗読技術、声、佇まい。複合的な要素に、ひとつの正解を求めるのではなく、正解などないと断じるのでもなく、複数の正解があって、各々の価値を愛と情熱を持ってロジカルに論じられるような。

太平洋戦争中の大政翼賛的な戦争賛美詩の朗誦に対する反省から肉声を失った日本戦後詩は音韻律を否定するというかたちで世界でも特異な発展をしてきました。失われた声を再び取り戻すには「個」であることを、「個」であり続けることを決して手離してはならない、と僕は考えます。その意味でも今大会で三木悠莉さんが選手権を取ったことが僕にとってはひとつの希望です。


2017年10月31日火曜日

通り過ぎた記憶、生成する景色

四谷三丁目 The Artcomplex Center of Tokyo で今日から始まった日本画家櫻井あすみさん1年ぶりの個展『通り過ぎた記憶、生成する景色』に行きました。

在学中から数々の受賞歴を持ち、今春東京藝術大学大学院博士課程を修了。最近では書籍の表紙画も手がけています。

一見して、小さな作品が増えたな、と思う。展示室の白い壁を右から辿ると「a piece」とだけ名付けられた小品が9点、そして視線はより大きなサイズの作品に移行する。

2年前の展示ではカフェの壁を覆い尽くす大作の仄暗くも新鮮な輝きに魅了されました。それは若い作家が世界と対峙しているまさにその境界を示しているように見えました。それから時を経て、世界との対峙はより人々の暮らしに向き合うような意識に変化しているように感じます。

従来多用されていた銀箔がアルミ箔に代ることにより画面の輝度は落着きましたが、ランダムに千切られて岩絵具と膠にコーティングされた軽金属は、対象となる風景や人物と作者の間にある空気の、それも均質ではない雪片や塵や化合物が浮遊し光線を乱反射させる大気の存在を気付かせる。

DM(画像)にもなっている「viewpoint」という作品が印象に残りました。ビルの屋上から眺める風景は無彩色に近いが色がある。雪の降り出す直前のような曇り空の下で道路の騒音以外にそれを示すものがないが確かに人々の暮らしは息づいている。微かな熱を感じる作品です。

初日ということもあり、作家ご本人が在廊でしたので、不案内な日本画の技法についてすこし質問をして教えてもらうことができました。


2017年10月29日日曜日

ノラバー日曜生うたコンサート

台風22号が関東地方に接近するなか、開場直後のノラバーのドアを開けると既に2人のお客様が。強い雨に打たれて傘や足元をびっしょり濡らして次々に到着する人たちは、なぜだかすこしはしゃいでいるみたいに見えます。

ノラバーが西武柳沢に引っ越ししてから、mayulucaさん7月16日に続き2度目のご出演です。ドレスコードはブルー。ネイビーからライトシアンまで、サテンやニットや、思い思いのブルーを纏った人たち。

カウンターだけの細長い店の一番奥の席で前回は聴きました。今回はバス通りに面した席で曇りガラスにもたれながら、mayulucaさんの演奏するギターのサウンドホールからわずか数十センチの至近距離。小さめの音量で爪弾かれる正確なフィンガーピッキング、低音弦のユニゾンの揺らぎ、ボディを指先や第一関節でコツリコツリと叩く音、微細な音の表情が手に取るように伝わる。演奏者本人はこういう音を聴いているのか。ごまかしの利かない距離でギタリストとしての確かさを感じる。

「朝が来て/昨日が昨日になってゆくのです/失いがたいものたちを/ひとつずつ抱きしめるのです」(チャイム)、「このあいだ前に住んでいた町の駅まで続く緑道を/ひとり歩いていたら心痛くなりました」(ほんとうのこと)。

これら1stアルバム『君は君のダンスを踊る』収録曲の澄んだ抒情は、2nd3rdと進むにつれてすこしずつ抽象化し、寓話的もしくは音韻重視に変化しましたが、今年書かれた2曲「3am」「doubt blue」の英語詞はよりシンプルでストレートに、カレッジフォーク的な曲調を伴って回帰しているのも興味深かったです。

店主ノラオンナさんの手料理ノラバー弁当は定番のポテトサラダが南瓜サラダに変わったハロウィン仕様。自家製の胡瓜と大根のぬか漬けに小茄子の昆布出汁漬けは台風サービスということで、お客様の差し入れの純米酒が進みます。

すっかり夜も更けて表に出れば、雨はすっかり上がって、透き通った深いブルーの夜空にきれいな半月が浮かんでいました。


 

2017年10月19日木曜日

TQJ Poetry Reading Live

雨が降って急に気温が下がりました。かすかに冬の匂いがします。そちらはいかがですか? 晩秋の白山で朗読会のお知らせです。

カワグチタケシ、究極Q太郎ジュテーム北村。ファーストネームの頭文字を並べて「TQJ」と名付けました。

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TQJ Poetry Reading Live

日時:2017年11月18日(土)15:00open 15:30start
料金:1500円+1drink order
出演:カワグチタケシ、究極Q太郎、ジュテーム北村
会場:JAZZ喫茶映画館 〒112-0001 東京都文京区白山5-33-19
   03-3811-8932 http://www.jazzeigakan.com/
   ※会場の地図はこちら

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1986年に18歳で現代詩手帖賞を受賞し、ゼロ年代のトーキョーポエトリーシーンで唯一無二の異才を放った究極Q太郎氏の10年ぶりのライブ。僕にとっては、カート・コバーンが実は生きていてワールドツアーの日程が発表された、ぐらいのインパクトがある大事件です。

先日のウエノ・ポエトリカン・ジャム5でもひときわ大きな歓声を集めたひとり、ジュテーム北村氏は生涯オープンマイカーを名乗り、ライブのブッキングを受けることはあまりありません。今年5月の『胎動 Poetry Lab0. vol.6』の客席で久しぶりに顔を揃え、今回の共演を決めました。

実はこの組み合わせ、中野VOW'S BAR2004年5月に一度切り開催されたことがあります。そのときは8畳のお座敷に40人以上のお客様というなかなかな混雑ぶりでした。そんな3人による13年ぶりのレアなライブをお楽しみいただけたらこれ幸い。

会場はおなじみJAZZ喫茶映画館さん。都営地下鉄三田線白山駅下車A3出口裏徒歩1分。1978年開店のヴィンテージ物件。マスター手作りの真空管サウンドシステム。壁にはヌーヴェルヴァーグのポスターと沢山の振り子時計がチクタク鳴っている。猫もいます。

ご予約は不要ですが、「行くよ!」とおっしゃっていただけると俄然モチベーションが上がります。皆様どうぞお運びください!



2017年10月15日日曜日

交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1

小雨降る日曜日、ユナイテッドシネマ豊洲で劇場版アニメ『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』を観ました。

西暦2305年、知的生命体スカブコーラルと人類の戦いにより荒廃した地球。公共福祉査察軍生化学即応軍の科学者アドロック・サーストン(声:古谷徹)は自らの命を犠牲にして地球を危機から救い、その状態を「サマー・オブ・ラブ」と名付けた。死の間際、息子レントン(声:三瓶由布子)をレイ(声:久川綾)とチャールズ(声:小杉十郎太)のビームス夫妻に託して。

2005年にMBS制作で放映されたテレビ版アニメの前日潭。アドロックが主役の冒頭約20分ノンストップの先頭シーンの迫力、ダイナミズム。CGを用いず、あえて手描きで制作されたということに驚かされます。

後半の舞台は10年後の2315年。全50話あるテレビシリーズを再構成したレントンと人型コーラリアン・エウレカ(声:名塚佳織)の物語です。PLAY BACK と PLAY FORWARD を繰返し、複数の時系列を行き来させるが、観ていて整理が追いついていかない感じがしました。

全編に日本語明朝体と英語のテロップによる登場人物、作戦、メカ、設定等の脚注が入りますが、一瞬で消えてしまうので、断片的な情報しか残らない。実際の戦闘中のスピード感と動体視力とはそんなものなのかもしれません。

「ハイエボリューション」は三部作で、来年と再来年に中編、後編が公開になるため、この「1」だけではなんともいえませんが、多くの布石が置かれているのは間違いのないところでしょう。

サマー・オブ・ラブ」は1967年に米国サンフランシスコで生まれウッドストック・フェスティバルに結実したカウンターカルチャーのムーブメントの総称です。そして「セカンド・サマー・オブ・ラブ」は1989年、英国マンチェスターのクラブハシエンダに端を発したレイヴ文化。

KLFLFOAPHEX TWINビースティ・ボーイズソニック・ユースTB-303ドンカマチックKORG製の初期アナログリズムマシン)、SK8など、1980~90年代ユースカルチャーへのオマージュ。当時を知る大人を刺激するワードが頻出する。エンディングにはボブ・ディランの"Like A Rolling Stone" の歌詞の引用も登場します。